日本サッカー界に未曾有の危機が訪れている。発端となったのは、8月2日にCSアセット港サッカー場で行われた、名古屋グランパス×浦和レッズの天皇杯全日本選手権4回戦だ。
この試合に0-3で名古屋に敗れた浦和の一部サポーターが暴徒化。興奮してピッチに乱入し、警備員の制止を振り切りって、名古屋側のサポーター席になだれ込んだ。相手の横断幕を強奪したほか、女性や子供にも突進していく様子が確認されている。
クラブの対応にも批判が集中した。試合翌日に処分を発表した浦和は、立ち入り禁止エリアへ侵入したサポーター45人に対しては「厳重注意」にとどめ、サポーターを統括するリーダーにも「浦和出場の16試合入場禁止」を言い渡しただけの甘すぎる対応。サッカーファンから「永久追放以外は考えられない」といった苦言が相次いだ。
8月28日には、さらに深刻な事態が判明した。8月2日の試合後にJリーグ、両クラブ、両サポーターの代表者が集まり話し合った際、浦和側のリーダーから「追加処分があれば、再び暴れる」との主張があったことが、明らかになったのだ。
今回の異常事態について、
「手ぬるい対応では、Jリーグの存続すら危うくなる」
と危機感をあらわにするのは、サッカー協会関係者だ。続けて強い口調で言うには、
「『また暴れる』との主張は明らかに脅迫です。『試合実施時におけるセキュリティーは究極の観客サービスである』との理念を掲げるJリーグにとって、看過できるものではない。なにより一部のサポーターが暴れることで、多くの観客が負傷、あるいは命を落とす可能性を忘れてはなりません」
ここで想起するのは「サッカー史上最大の悲劇」だ。
「1964年にペルーで行われたペルー×アルゼンチン戦では、微妙な判定をきっかけにホーム側サポーターが暴徒化したことで、群集事故が発生。328人の死者を出す『エスタディオ・ナシオナルの悲劇』が起きました。昨年もインドネシアのサッカー暴動で、133人が死亡する事件がありました。今こそ、こうした悲劇を我々は思い出すべきです」(前出・サッカー協会関係者)
断固とした対応が求められているのだ。
(川瀬大輔)