日本サッカー協会(JFA)の規律委員会は9月19日、天皇杯4回戦の名古屋―浦和戦(8月2日・CSアセット港サッカー場)で起きた70人以上の浦和サポーターによる暴徒化問題で、浦和に対し来年度の天皇杯参加資格剥奪とけん責処分(始末書提出)を科すことを発表した。
この発表に浦和は田口誠社長名義で「過去実績に縛られすぎた思考に組織として陥ってしまっていた」「他者からの意見に耳を傾け(中略)変わることを恐れない姿勢を示していく」などとした声明を出した。
ただ、今回の処分で規律委員会は、2000年以降、浦和サポーターが起こした問題行動による「懲罰事案が(天皇杯を含め)11件にも上る」ことも指摘している。
現在のJ1リーグは毎年、過密日程が各クラブの重荷になっている。そんな中、天皇杯の参加資格剥奪という処分には甘すぎるとの指摘が多く聞こえる。
「浦和にとっては日程が楽になるだけで逆にありがたいくらいです。本来であればそれこそ、クラブの経営にも打撃を与えるほどの長期間の無観客試合をさせるべきなんです」(浦和担当記者)
加えて始末書の提出だけで罰金もなく、モヤモヤ感は拭えない。
1993年にスタートしたJリーグ。当時は世界各国でサッカー観戦中に暴徒化するサポーターが大きな問題になっていたことから、「女性や子供、お年寄りも安心安全な観戦状況の提供」を第一に目指してきた。裏切り続けているのは何も浦和サポーターばかりではない。鹿島の男性サポーターも10日のルヴァン杯(対名古屋)のメインスタンドで運営スタッフに威嚇行為を行い、鹿島が無期限の試合入場禁止を通達している。しかし…。
「そんなことをしても意味はないです。今のJクラブのスタジアムの管理体制では、暴徒化により処分が出ているサポーターも簡単に入場できてしまう。チケット購入も可能ですからね。鹿島のサポーターもクラブの成績不振が続き、最近過激化する一方。もっと厳しい処分が必要です」(鹿島担当記者)
暴徒化しているサポーターの管理にどのクラブも打つ手がない。今回の浦和と鹿島のサポーターによるトラブルは、どちらも警察が介入している共通点がある。被害を受けた場合、毅然とした態度で「被害届」を出し、しっかりと事件化する以外に撲滅の道はないのではないか。Jリーグの「安全」は完全に崩壊した。浦和サポーターの「暴徒化問題」も、JFAからの処分が出たからといって解決したわけではない。
(小田龍司)