「ワグネルの乱」を主導したエフゲニー・プリゴジン氏を乗せたプライベートジェットが墜落し、反逆者プリゴジン氏をはじめ、同機に同乗していたワグネルの最高幹部らが死亡した事件。独裁者プーチンが企てたとされるこの「暗殺事件」を巡っては当初、「機体は地対空ミサイルによって撃墜された」とみられていた。
具体的には、地対空ミサイルはロシアの首都モスクワとサンクトペテルブルクの中間点に敷設された防空網から発射されたらしいこと、この防空網はこの地にあるプーチンの秘密の別荘を守るために張り巡らされたものであること、などが指摘されていた。
ところがその後、欧米の諜報筋が分析を進めた結果、「墜落は機体に仕掛けられた爆発物によるもの」である可能性が浮上した。ロシア全土を監視している欧米の軍事偵察網に地対空ミサイルが発射された痕跡が見当たらないこと、機体の残骸が約2マイル(約3.2キロ)にわたって広範囲に落下していること、などが爆発物説の根拠とされている。
では、誰がプーチンの殺人指令を実行に移したのか。ロシアの軍事活動や諜報活動に詳しいアナリストが指摘する。
「地対空ミサイルによる撃墜だった場合、暗殺の実行部隊はロシア国防省ということになる。プーチンの暗殺指令を受けたショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長が、国防省内の秘密部隊に命じて実行を指示した、という流れです。一方、爆発物による破壊であれば、暗殺の実行部隊はFBS(連邦保安局)ということになります。FBSの前身は、プーチンも所属していた旧ソ連のKGB(国家保安委員会)。この場合、プーチンは自身直属のFBSの秘密部隊に命じて、機体に爆博物を仕掛けさせたと考えられるのです」
ちなみに、ロシアのペスコフ大統領報道官は、
「西側で語られている憶測は全てウソ。プーチン大統領は墜落事故の調査結果を待っている」
としていたがその後、
「国際ルールに基づく調査は実施しない」
と述べるなど、姿勢を大幅に後退させている。やはりプリゴジン氏ら反逆者は、独裁者プーチンによって無残に粛清されたのである。
(つづく)