被害者の会が「人類史上最悪の性虐待事件」と評した、ジャニー喜多川氏による性加害問題について、外部専門家による再発防止特別チームが8月29日に、衝撃的な調査報告書を発表した。ジャニー氏の性嗜好異常や、メリー喜多川氏による放置と隠蔽などが原因と断言し、「長期間にわたって性加害が繰り返されていた」と認定。同時に、テレビ各局が自社の番組にジャニーズタレントを出演させられなくなる危惧から、性加害について取り上げるのを控えていたと「マスメディアの沈黙」を厳しく指摘している。いわば、ジャニー氏の異常な犯罪行為を助長させた「共犯者」として、クローズアップされることになったのだ。
いかにしてテレビ局は「ジャニーズの犬」となったのか。在京キー局関係者が証言する。
「とりわけ『ジャニーズ汚染』が顕著なのは『スポーツイベント』でしょう。90年代中盤以降、ありとあらゆるスポーツ大会の中継に、ジャニタレが起用されるようになりました。じっくりと競技を見たい視聴者から『ジャニーズ不要論』が噴出し続けているにもかかわらず、いまだ状況に変化は見られません」
フジテレビが独占中継するW杯バレーでは、1995年にV6がテーマソングを担当して以降、7大会連続でジャニーズ所属グループが大会の顔になった。同局では春高バレーでも1996年以降、売出し中のジャニーズタレントを前面に押し出している。
テレビ朝日では、サッカー日本代表戦中継の「応援団長」を、香取慎吾が2005年からSMAPが解散するまで、12年間担当。スポーツと縁遠い「超インドア派」の稲垣吾郎までもが「マーメイドプリンス」なる奇妙な肩書きで、2006年シンクロW杯と2007年の世界水泳の公式サポーターに任命された。
嵐の櫻井翔は2008年の夏季北京五輪から2022年の冬季北京五輪まで、8大会連続で日本テレビの五輪キャスターに起用され続けている。前出の在京キー局関係者が嘆く。
「こうして、今では注目されるスポーツイベントの大半に、ジャニーズが絡むようになってしまった。これは単に『中継の視聴率を稼げる』『ファンがスタジアムに足を運んでくれる』といった理由だけではありません。結局のところ、ジャニタレを使うことによって『ジャニーズと昵懇の広告代理店がCMスポンサーを紹介してくれる』といった、局の懐事情に関わる話に発展してくるんです。仮にジャニタレを外すと、代理店から渋い案件しか来ないのは目に見えている。大会中継の責任者としては、自らの一存で会社の売り上げを減らすわけにはいきません。テレビ局にとってカネの出どころである代理店を押さえているのが、スポーツイベントがジャニーズ一辺倒となった最大の要因でしょうね」
広告代理店もまた、「共犯者」なのだった。
(川瀬大輔)