「Show must go on!」なる信念を体現したような芝居がかった記者会見だった。半世紀以上にわたって少なくとも数百人の少年たちに性被害のトラウマを植え付けた張本人はすでに鬼籍の人。カリスマ創業者による鬼畜の所業を認めながらも「死人に口なし」とシラを切るようにしか見えなかった。いまだに口止めが徹底される〝ジャニーイズム〟の暗部はいったいどこまで深いのか。
「やっていることは鬼畜の所業だと思っています」
眼光鋭く低音ボイスを響かせたのは「少年隊」の東山紀之(56)である。9月7日にパレスホテル東京で実施されたジャニーズ事務所の記者会見の席上、故・ジャニー喜多川氏(享年87)による「性加害問題」を事実認定。それを受けて引責辞任した藤島ジュリー景子社長(57)の後任に就くことも発表された。しかし、肝心の性加害を認識した時期について問われても、東山新社長は、
「噂としては聞いておりました。私自身は被害を受けたことがなく、受けている現場に立ち会ったこともなく、先輩たちからも後輩たちからも相談もなかったので、噂がある認識はありましたけど、みずから行動するということはできずにいました」
と、言い訳がましい言葉を並べてはぐらかすばかり。03年に東京高裁が「週刊文春」で報じられた「ジャニー氏によるジャニーズ事務所所属タレントへのわいせつ行為」の真実性を認定してから20年余り。その間にも知られざる性犯罪が不問に付されてきたのだ‥‥。かつてジャニーズ事務所でソロ歌手として活躍した、豊川誕氏(64)が会見の様子を振り返る。
「テレビの生中継を拝見しました。ジュリーちゃんが『1人ひとりが努力して(スターになる)地位を勝ち取っている』とお涙頂戴で訴えていましたが、論外ですよ。成功を収めたタレントの下には、知られざる性被害にあった少年たちがたくさんいる会社の構造なんですからね。東山も『あの方は誰も幸せにしなかった』『人類史上最も愚かな事件』と厳しい言葉でジャニーさんを断罪していましたが、あくまで性加害の事実を知ったのは、『(世間には8月29日に公表された)再発防止特別チームの提言を受けて』という体裁を取っていた。いったい何を守ろうとしているのやら」
事実、同事務所で40年以上にわたり広報担当として従事し、「ジャニーズを最も知る人物」と呼ばれる白波瀬傑副社長は会見場に姿を見せなかった。しかも、会見前に大した聞き取り調査も実施されていなかったようで、「やはり、すごくセンシティブな問題ということもあって、直接聞くというのが僕にはできなかった」
自信なさげな東山のこんな回答からも、実態解明にはほど遠いように思える。誰しもがその話題は避けて通りたい、10代の少年たちばかりか芸能界をも震え上がらせたカリスマ創業者のドス黒い欲望はどれほどまでに増長していたのか─。