「ワグネルの乱」の主導者であるエフゲニー・プリゴジン氏を標的とした爆殺事件は、「裏切り者は絶対に許さない」とされる独裁者プーチンの残忍性を改めて浮き彫りにした。
だが一方で、プリゴジン氏をはじめ、ワグネルの最高幹部らが搭乗していたプライベートジェットの墜落直後から、ロシア国内を中心に「実はプリゴジンは生きている」との憶測が飛び交っていたのも事実だ。今なお根強く囁かれ続けている、衝撃的な生存説の根拠としては、以下の5点が挙げられている。
●墜落したプライベートジェットは故障が続いており、プリゴジン氏は普段からこの機体を使用していなかった
●事故当日、別のプライベートジェットがモスクワを離陸しており、僚機の墜落を見届けた後、この機体(プリゴジン氏が搭乗か)はモスクワに引き返している
●墜落機に搭乗していたとみられる2人のパイロットが墜落直前、パラシュートで脱出したとの目撃情報がある
●プリゴジン氏をめぐっては、これまでにも少なくとも数回、墜落死や爆殺などの死亡説が流れたことがある(しかし、実際には生きていた)
●墜落現場から搬出されたとされる遺体がプリゴジン氏であるかは、証明されていない
真相はいずこにあるのか。プーチン政権の内情に詳しいロシア専門家が言う。
「生存説には希望的憶測の色合いが多分にある。プリゴジンが生きている可能性は極めて低く、やはりプーチンに消されたと考えるのが妥当でしょう」
こう前置きした上で、次のように指摘するのだ。
「むしろ重要な点は、生存説が様々な裏情報とともに流れ続けている、という点にあります。実はプーチン自身、これを最も恐れていました。ロシア国内でプリゴジンが神格化され、ワグネルの残党をはじめとして、粛清された体制内の不満分子が決起すれば、ロシアを二分する内乱に発展するのは必至。事実、クーデターの機はすでに熟しつつあります」
赤の広場に引きずり出され、銃殺刑に処せられる独裁者。生存説はプーチン破滅への序曲なのである。
(おわり)