岸田文雄首相はすっかり「ドリル優子」のアダ名が定着した小渕優子氏を「選挙の顔」として選対委員長に抜擢することで、低迷する内閣支持率の上昇につなげようとの皮算用だったが、逆効果だったようである。
FNNと産経新聞の合同世論調査によれば、小渕氏の選対委員長起用に58.7%が「評価しない」と答えた。毎日新聞の世論調査でも、小渕氏の起用を「評価する」は21%にとどまり、「評価しない」(56%)を大きく下回った。共同通信が改造直後の9月13、14両日に行った調査でも、小渕氏起用は「適切ではない」が58.8%に上っていた。
岸田首相は小渕氏の登用について「選挙の顔のひとりとして活躍を期待している」と語った。だがFNN調査では、自民党支持層の間でもこの人事を「評価しない」(45.2%)が「評価する」(43.8%)を上回っている。
小渕氏は就任記者会見で、2014年に政治とカネをめぐる問題で経済産業相を辞任したことについて「忘れることのない傷」と形容したが、自民党支持層の間でも「今なお説明を避けている」との印象を持たれているのだ。
小渕氏側の依頼で設けられた、弁護士や税理士で構成した第三者委員会は「ドリルで(証拠データが入ったパソコンに)穴を開けたのは小渕事務所のスタッフではなく、業者だった」とし、「データは保存されていた」と報告した。検察側も「捜査に支障はなかった」としている。それでも「ドリル優子」のアダ名の破壊力は、いまだに残っているのだ。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)