映画「砂の器」や米ドラマ「将軍 SHOGUN」などで知られる島田陽子が、大腸ガンによる多臓器不全でこの世を去ったのは2022年7月25日。まだ69歳だった。
清純派としてデビューした彼女は、映画やドラマで数々のヒロインを演じ、その美貌と演技力が高く評価される。米ゴールデングローブ賞を受賞したことで、国際派女優としても一目置かれる存在だった。
一方でプライベートでは内田裕也との不倫報道をはじめ、突然のヘア写真集発売騒動、借金などの金銭トラブルがたびたび報じられ、お騒がせ女優としてその名を馳せることになる。一時期、彼女のスキャンダルと記者会見がセット化していたのだが、そんな中でも彼女の性格がよく表れた会見がある。1994年5月15日、アメリカ映画「キリナ」撮影のため、カナダ出発前に「2分だけ」との条件付きで成田空港で行われたのがそれだ。
当時、彼女はテレビスタッフとの結婚宣言会見を開いた直後だったが、一部メディアが借金問題や金銭トラブルを報道。それによれば1991年9月に横浜市内に新築を建てた際、借り入れ金2億5000万円の支払いが滞り、固定資産税と市民税の4年間にわたる滞納が明らかになった。さらに2年前まで生活していたニューヨークから日本に戻る際の引っ越し代金、ドレス代金の支払いも滞ったまま。おまけに無免許で愛車の白いジャガーを運転していた疑惑も重なり、日本を出発する前の緊急会見となったわけである。
「お金のことは税理士さんやマネージャーが全部管理してくれますので、自分でタッチしていないんです。本当にそんな事実があったら、早急に対処しなくてはと話しています」
自身は知らなかったと反論したのだが、税金滞納について聞かれると、
「(督促状は)平成5年度分のものはありますが、それ以前のものはありません。税理士さんが解決済みです。ですから、昔のものを滞納していると言われても困るんです。(滞納しているのは)平成5年度分です」
そして無免許運転に関しては、
「2~3年前までニューヨークに住んでいて、向こうの運転免許なので、うっかり置き忘れて切れてしまって。最初から受け直して仮免までいったんですが、本免の試験は仕事で行けなくて、そのままになっているんです」
要は仮免で運転していたようなのだが、それでも、
「こんなに規制の厳しい東京で、おまわりさんもいっぱいいるところで、無免許で運転すること自体、不可能です。できません!」
なんとも堂々とした態度で、報道を否定してみせたのである。
ある意味、常識にとらわれないこのアバウトな思考こそが、昭和の大女優の証なのかもしれないが…。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。