熱海富士が3敗、貴景勝と大栄翔、高安と北青鵬が4敗で並ぶ大混戦で、9月24日に千秋楽を迎えた大相撲秋場所。貴景勝が優勝決定戦で熱海富士を下し、4度目の賜杯を手にした。
勝敗次第では26年ぶりとなる4人での優勝決定戦の可能性を残し、相撲ファンは沸き立ったが、なんとも歯切れの悪い幕切れに。なにしろ優勝決定戦では前頭15枚目の21歳・熱海富士に対し、大関の貴景勝が立ち会いで左に変化。はたき込みで勝利したのだ。
貴景勝によるまさかの注文相撲について、NHKの中継で解説を務めた舞の海秀平氏は、
「大関なので、勝って責任を果たさなければいけないという気持ちは分かる」
と理解を示しつつも、次のように苦言を呈したのである。
「勝つにしても、立ち合いでひとつ当たってほしかった。相手は平幕の若手ですから、受け止めてほしかった」
さらに辛辣な見解を明らかにするのは、好角家のスポーツライターだ。
「今場所は熱海富士が大健闘していただけに、優勝決定戦のガッカリ感は半端ない。貴景勝の立ち会いは、自分さえ勝てればいいというエゴそのもの。優勝インタビューで貴景勝が熱海富士を『将来、必ず強くなると思う』と称えて『自分が壁になりたい』と語っていましたが、あの取り組みを見た後では、何を言ってもシラケてしまいます。来場所の結果次第では横綱昇進の可能性もあるとのことですが、仮に全勝優勝したとしても、横綱にすべきではない。まだ横綱にふさわしい格が、貴景勝の身にはついていませんよ」
照ノ富士が休場中は最高位の大関として、優勝しても逆風にさらされるのだった。
(川瀬大輔)