究極の「中継ぎ監督」の誕生だ。本来であれば8月に決定するはずだった野球日本代表「侍ジャパン」の次期監督に、元中日、巨人の井端弘和氏が事実上内定した。
これまでプロでの監督経験のない井端氏の大抜擢だ。ただ、日本野球機構(NPB)と井端氏との契約期間は、次回2026年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)までではない。来年11月に行う「プレミア12」までという、異例の短期契約で交渉を開始する。
今年3月に行われたWBCで世界一を奪還した栗山英樹前監督が「MLBで活躍した若いOBに声をかけるべき」とNPB側に提言。そこでスポーツマスコミはこぞって、イチロー、松井秀喜両氏の名前を挙げたが、もちろん両者とも固辞。50人近くリストアップしたものの完全にネタ切れで、次期監督選考は難航を極めていた。
しかし井端氏にも日本代表監督に就任できるキャリアがある。それは現役時代だけではなく、コーチも任された巨人OBという点だ。
WBC東京大会では読売新聞グループが興行権を獲得している。その関係は歴代監督を見ても一目瞭然で、
「初代の王貞治さん、原辰徳さん、広島の監督でしたがその後は日本テレビの解説の山本浩二さん、ダイエーの主力打者だった小久保裕紀さんと、『巨人』とかかわりのあるOBが多い」(巨人担当記者)
前回のWBCで栗山氏に白羽の矢が立ったのは、「大谷やダルビッシュとの太いパイプがあったから。東京大会にこの2人を招集できる監督として、読売グループが推した監督だった」(前出・巨人担当記者)
ではなぜ、井端氏の契約はわずか1年なのか。
「それは読売VS中日という新聞の発行部数の争いが大きな理由です。発行部数世界一のギネス記録にも認定されているのが読売新聞ですが、中日のお膝元・名古屋地区では中日新聞にどうしても部数獲得戦争で勝てなかった。読売としては今回、息のかかった井端氏をねじこんだものの、そのままWBCとなると中日色が強すぎる。そのため、あくまで『中継ぎ』となったのでは」(別の巨人担当記者)
ちなみに井端氏は、巨人では高橋由伸氏との関係が極めて良好。無理のない引き継ぎを考えれば、WBC本番では「高橋由伸監督」が自然な流れではないか。ただ、そこには契約をあと1年残した巨人の原監督の去就と組閣も大きく影響しそうだ。
(小田龍司)