10月1日は都民の日。この日は都民でなくとも来園者は上野動物園に無料で入園できるため、1年で最も上野動物園が賑やかになる。ただ…その前に心配なニュースが入ってきた。上野動物園の公式サイトによれば
〈上野動物園のジャイアントパンダ「シンシン」が高血圧を理由に、今月20日から公開を中止しています〉
〈現在、投薬しながら定期的に血圧測定をおこない、健康観察を継続するとともに、投薬量など、動物の状態を見ながら慎重に対応しています。より安定した血圧測定をおこなうため、左腕の一部の毛を短くしておりますが、シンシンが気にしているようすはありません〉
〈2023年9月25日測定の結果、シンシンの体重は127.0kgでした〉
シンシンは中国に返還されたシャンシャンと、双子の赤ちゃんパンダ、シャオシャオとレイレイの母親。同園のサイトには、シンシンが前足に血圧計を巻き、天井を見ながら血圧を測ってもらうシュールで可愛い写真が掲載されている。中に人間が入っているのか、リラックマかパンダ呪骸と見まごう姿にクスッとなるが、病状はかなり深刻で、9月中旬ごろから3回にわたって鼻血を出しているという。
パンダにも高血圧があるとは驚きだし、パンダの正常血圧がどれくらいの数値なのかの資料もない。鼻の粘膜の毛細血管が破れて「鼻血が出ている」だけならいいが、眼球の毛細血管が切れれば、シンシンは失明する。脳の血管が切れたり、動脈破裂で急死するおそれもある。
今年の猛暑で、上野動物園のパンダ4頭は屋外施設に出る機会が少なく、運動不足が心配されていた。ようやく屋外施設に出られるようになった矢先の体調不良なのだ。
上野動物園のパンダはいつも寝ていると思っていたが、シンシンはかなり活動的で、入園者の方を向いて座って笹を食べたり、吊るしたタイヤで遊んだり、シャンシャンや双子パンダと戯れたりと、これまでの上野動物園のパンダと比べてフォトジェニックな「映える」お転婆さんだ。
園のシンシン紹介文には〈音には敏感で、聞きなれない物音がするとそわそわと落ち着かなくなってしまう、繊細な一面もあります〉とある。
屋外施設に比べて入園者との距離が間近な屋内施設での衆人環境が長期間続いたことがシンシンのストレスと高血圧に影響していたとしたら、こんな悲しいことはない。公開復帰は急がず、どうか十分に休養してほしい。
(那須優子/医療ジャーナリスト)