ベストセラー作家の百田尚樹氏が立ち上げる「日本保守党」は9月30日に党員登録を開始したところ、1日で3万人を超えた。SNSなどの書き込みを見ると、自民党員を辞めて日本保守党に移るケースも少なくない。百田氏は「巨象のような与党の前では『蟷螂の斧』のごとき小さな存在でしかありません」と謙遜するが、自民党内では次期衆院選で小選挙区に対抗馬を立ててくるのではないかと懸念する議員も出ている。
そこで注目される3つの選挙区がある。岐阜5区、福井1区、そして埼玉2区だ。古屋圭司元国家公安委員長、稲田朋美元防衛相、新藤義孝経済再生担当相が議席を持つ選挙区。いずれも自民党内では保守系とみられている3人だが、なぜターゲットになるのか。それは3人とも性的少数者(LGBT)への理解増進法成立に尽力したからだ。
百田氏はLGBT理解増進法について「天下の悪法である」と批判し、ジャーナリストの有本香氏と共に新党を結成するきっかけとなったとしている。それだけに、岐阜5区などが象徴的な選挙区になるというわけなのだ。
2005年の衆院選で、郵政民営化に反対した候補者に当時の小泉純一郎総理が「刺客」を立てたのに倣い、対立候補を擁立しようと検討している。
日本保守党の応援団のひとりである福井県立大の島田洋一名誉教授は9月28日夜、有本氏のネット番組に出演した際、稲田氏に対抗して福井1区から出馬することを有本氏に勧めた。島田氏は出演後、X(旧Twitter)にこう書き込んだ。
〈確かな筋によれば、何より稲田氏本人が、百田氏ないし有本氏の参戦を非常に懸念している。福井の保守党は完全に稲田氏から離れており、間違いなく勝負になる〉
今のところ、百田氏や有本氏は次期衆院選に出馬しないとみられているが、仮に百田氏が岐阜5区か埼玉2区、有本氏が福井1区から自ら「刺客」として出馬すれば、無風とみられていた3選挙区はにわかに注目選挙区となるのだ。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)