この時期になると毎年取り上げられるニュースに、もう食傷気味の人もいる。10月5日に今年のノーベル文学賞が発表され、ノルウェーの劇作家ヨン・フォッセが選出された。
「フォッセの戯曲は、その独特の『抑揚』や『間』が特徴。受賞理由は『言葉では言い尽くせないものに声を与えるような、革新的な演劇と散文に対して』だった。日本でも『だれか、来る』や『名前』といった作品が上映されています」(文芸誌ライター)
報道によれば、フォッセは英ブックメーカーのノーベル文学賞受賞者予想で、今年も上位人気だったという。
ノーベル文学賞は過去にロマン・ロラン(仏)、トーマス・マン(独)、パール・バック(米)、ヘルマン・ヘッセ(独・スイス)、ヘミングウェイ(米)、カミュ(仏)、スタインベック(米)、ショーロホフ(ソビエト)といった世界的な大作家が受賞したほか、近年ではミュージシャンのボブ・ディランや日本生まれのイギリス人作家であるカズオ・イシグロの受賞でも話題に。
一方で、世界的に人気の高い日本人小説家・村上春樹は今年も受賞を逃した、というニュースも報道されている。
「これは毎年のように報道され、かれこれ20年近くになる。そのたびに、受賞を残念がる村上ファン『ハルキスト』たちの姿が取り上げられています。しかしこのニュースにはいいかげん、ウンザリしている人が相当数いますね。村上ファンは日本の数多くの作家のファンの中でも、特に熱心な存在。中には村上作品しか読まない人も存在し、多くの文学ファンから眉をひそめられることもあります。村上春樹は好きだけどハルキストは嫌い、という人も少なくありません」(前出・文芸誌ライター)
世界的な作家であることは疑いようがないし、英ブックメーカーの予想では毎年、上位人気になる存在。今年は6年ぶりの長編作品「街とその不確かな壁」が発売されたこともあり、例年以上に受賞に対するハルキストたちの期待は高かった。だがそんなファンたちの相も変らぬ騒ぎっぷりを快く思わない文学ファンの存在も忘れてはならない。
(石見剣)