ウクライナ・ロシア戦争でロシアの反転攻勢の可能性が高まっているという情報が駆け巡り、欧米諸国に衝撃を与えている。
防衛省関係者は理由をこう明かす。
「最大の理由は、最大最強のアメリカのウクライナ支援予算が途絶える可能性があるためです」
ウクライナへのアメリカの支援はロシア侵攻以来10兆円を超え、全体の5割強を占める。しかし最近のアメリカは超インフレで庶民が悲鳴を上げている状態で、支援「NO」の意見が過半数(CNNなどの調査)を占めつつある。それを受け米議会では、下院で多数を占める反バイデンの共和党が24年度予算を巡り支援予算に猛反対で大混乱中だ。
「とりあえず11月までの『つなぎ予算』が成立したものの、その予算に『ウクライナ予算』は盛り込まれていない。これから先、本予算を通過させるにしても大幅縮小が通過条件となるのは必至でしょう」(前出・防衛省関係者)
アメリカのみならずEU関係者も「支援疲れは欧州でも起こりスロバキア、ポーランドなどで見え始めている」としている状況で、
「ウクライナは弾丸不足に苦しみだしている。EUでは供給弾薬が近いうちに底をつくだろう。アメリカも同様で、イランから没収した110万発の弾薬を急遽供給するという苦肉の策をとるほどですからね」(前出・防衛省関係者)
これらの欧米のバタバタぶりに対しロシアはどう出るか。すでにプーチン大統領は9月、北朝鮮の金正恩総書記と会談し、北朝鮮が武器・弾薬をロシアに提供する可能性が高まった。防衛省関係者が続ける。
「ロシアは武器、弾薬を北から調達するばかりか、国内生産も拡大中で、米紙ニューヨーク・タイムズによればロシアの砲弾の生産能力は欧米諸国の7倍にのぼるという。さらに世界最長、1万8000キロの射程をもち南極経由でもアメリカを狙えるミサイル『サルマト』を実践配備した。また地球全体を射程にできる原子力推進の巡航ミサイル『ブレヴェスニク』の実験に成功するなど軍事力を高めている」
加えてロシアにとって好都合なのは、7日に突然起きたイスラエルとハマスの武力衝突だ。アメリカや欧州は、この戦いにある程度の勢力を割く必要に迫られる可能性もあるからだ。
軍事アナリストは警告する。
「このままではウクライナは反転攻勢どころか、ロシアが再び反転攻勢に出て敗北の可能性さえある。となるとロシアは軍事力と核での脅しをエスカレートさせ、第二第三のウクライナが出る」
この苦境に欧米は今後どんな手を打てるというのか。そしてウクライナはもう一度攻勢に出られるのか。
(田村建光)