靖国神社の敷地内最深部には「遊就館」なる博物館が設置されている。ここでは過去の戦争を誇示、賛美するかのような展示物がこれでもかと鎮座するのだ。
「あまりに世界の共通認識とかけ離れていて、目を疑いました。まるでカルト宗教の施設のようです」
とまくしたてるのは、同館を訪れた日本在住のアメリカ人男性だ。外国人を仰天させた遊就館に、記者も足を運んだ。
館内に入るとまず目に飛び込んでくるのは、実物大のゼロ戦だった。解説パネルには「中国で空前の戦果をあげた」と、その強さが誇らしげに書かれている。
入場料800円を払えば観覧可能な展示ゾーンは、時系列で構成。古代の武具の紹介に始まり、戊辰戦争、西南戦争、日清戦争から太平洋戦争に至るまでの近代戦争史が早わかりだ。その近代戦争コーナーの入り口には「19世紀のアジアは欧米列強によって侵蝕された」と記され、日本の戦争がやむなしだったと示唆。
日露戦争コーナーでは、現存する映像を編集したビデオが流され「日本軍大勝利!」の文字がモニターにデカデカと躍る。また「世界が称える日本の戦勝」として、当時の世界各国の新聞を展示。同コーナーでは常に勇ましい軍歌が鳴り響いていた。
圧巻は大東亜戦争コーナーだ。軍服や出征記念の旗、トラトラトラの電文など多岐にわたる展示がなされ、どれもかなりの分量。
「日本の占領のおかげで独立できた」とするインドネシアなど東南アジア諸国から贈られた手紙や勲章などが展示されており、そこには誇らしげな解説が並ぶ。
さらに大展示室には「人間魚雷・回天」や「艦上爆撃機・彗星」など実物大の特攻兵器が‥‥。
この遊就館について、
「まだ大きな問題になっていませんが、今後、中国や韓国に目をつけられ、つけ込まれるおそれもあります」
と、全国紙政治部デスクは危惧するのだった。
館内の売店には帝国軍の帽子や日の丸ハチマキ、ゼロ戦プラモが陳列、にぎわいを見せていた。これぞまさに極右的施設の極致──。