北朝鮮が仕掛ける「最終計画」の前置きとして、半島情勢に詳しい作家の北一策氏が、北朝鮮の抱える“矛盾”を喝破する。
「第一次朝鮮戦争で締結された休戦協定は実質的に消滅状態にあります。そのため、北朝鮮は常に外敵の脅威にさらされていて、軍事費の増大が計り知れない。また逆説的に、ミサイル開発や核実験を繰り返して充実化させることで、陸軍兵士を減員させ軍事費を抑えている側面もある。金正恩氏は強硬なミサイル外交の裏で、軍事費を抑える唯一の手段である“平和協定締結”を強く望んでいます」
このまま何も手を打たなければ国力が磨耗し続け、いずれは“自壊”していくことは明らかだ。そこで意外なことに、金正恩氏は日朝関係に活路を描いているという。
「平和協定を締結すれば、米朝国交が正常化する。それにより国連制裁が解除され、北朝鮮の経済は好転するでしょう。さらに、日朝国交正常化にもつながる。金正恩の狙いはまさにこれ。日本に対して堂々と巨額の戦争賠償金を要求することができるからです」(前出・北氏)
第二次世界大戦で賠償責任を負った日本が、65年の日韓基本条約において韓国に無償で支払った賠償額は3億ドルだった。これは現在の貨幣価値に換算すると、1兆800億円に相当する。
「実は韓国に支払った総額の内訳には、統一後の北朝鮮への分配金も含まれているため、国際法上では日本に北朝鮮への戦後補償義務はありません。しかし、日本は小泉政権時から続く国交正常化に向けた交渉で、北朝鮮から韓国以上の賠償を請求されていました。その金額は5兆円とも言われています」(社会部記者)
韓国側が今なお戦後補償でゴネ続けている現状を踏まえて、北朝鮮が「平和国家」として世界に認められた暁には、日本が経済的に“泥”をかぶる可能性が出てきたというのだ。前出・北氏はさらに言う。
「もう一つ北朝鮮がもくろんでいるのは、国交再開後の北朝鮮国内のインフラ整備を日本政府主導でやらせることです。電気設備や道路の建設に加え、雇用促進のための工場設置やインターネット通信の充実など、手をつけたいところが山ほどあり、相当額の支援を要求されることになる」
ハゲタカのように日本マネーを当て込んでいるのは、北朝鮮だけではない。
「実は今、ドイツを筆頭にフランスやイギリスなどの欧州各国の民間企業が、数十社規模で北朝鮮国内に支社を作っています。インフラ整備を日本がやれば、彼らは自分の懐を痛めることなく、かつ出資の“取りっぱぐれ”がなくなるため、北朝鮮にくみして補償を出させようとするでしょう」(前出・北氏)
たとえ“核の脅威”から逃れても、日本だけは安穏としてはいられないのだ。