一部では、まさかのFA宣言をしたオリックス・金子千尋(31)を落合GMが引っ張ってくるとも報道されているが、逆に強権を持つ絶大な存在感は、補強面でさらなるマイナス要素になっているようなのだ。先にも触れた、落合GMの「クビ斬り」政策にスカウト陣からブーイングが起きているというのである。
10月30日、10年のドラフト会議で2位指名され、“立浪2世”とまで言われて背番号「3」を譲り受けた吉川大幾(22)が、落合GMから呼び出され「来季の構想に入ってない」と戦力外を通告されたのである。
「吉川の練習態度が問題視されていたとも言われましたが、将来を期待された高卒4年目の選手をあっさり斬ったんです。1年目のルーキーでも活躍しなければ減額制限ギリギリの25%ダウンを言い渡し、わずか数年で放り出すやり方ですから、選手を送り出すアマ球界からは半ば総スカンになっていますよ」(球界関係者)
今年のドラフトでも、育成枠で1位指名した東海大相模の佐藤雄偉知(18)から社会人入りの意向を伝えられ、早々に交渉権放棄という事態に陥っている。
「契約金はもらえず、わずかな支度金と年俸で獲得する育成枠での指名は、コストカットの範疇だと思われてもしかたがない。自信がある選手であれば、社会人野球に進んで、あらためて正当な評価を受けようというのも当然でしょう。球団内でスカウトを中心に頭痛のタネとなっているのが、神奈川予選で1試合20奪三振を記録して、“右の松井裕樹”と言われる東海大相模の2年生、吉田凌(17)の獲得問題です。来年のドラフトの目玉ですが、アマ球界でも影響力のある同校に中日だけは拒否する姿勢を打ち出されたら、もう目も当てられませんね」(球団関係者)
一方、落合GMも補強に動いてはいるのだが‥‥。
「落合GMは社会人野球をくまなく見て回り、トライアウトも視察している。昨年、トライアウトで拾った工藤隆人(33)が46試合に出場して渋く活躍しましたが、今年もオリックスを戦力外となった八木智哉(31)を再生可能と判断して獲得した。所属選手にシビアな対応をする時とは打って変わり、補強戦略は地味でリーズナブルな動きをしている。結局、Bクラス脱出を目指すチームの浮沈に関わる補強は、ドミニカにパイプを持つ森コーチにまる投げとなりますね」(スポーツ紙デスク)
昨年の就任会見で、「優勝するチームを作らないと意味がない。今まで以上に責任を感じている」と口にした落合GMだったが、選手の年俸を削り、大リストラを敢行した結果、今季もチームは4位と低迷した。それでもまだ、GMの強権は発動されていきそうだ。
プロ野球解説者の江本孟紀氏が語る。
「本来、コストカットなんていうのはGMの仕事ではないですよね。いかに経営サイドから金をぶんどってきて戦力補強に使うかが仕事でしょう。既成の概念でできないことをやるのは、ある面で悪くはないですが、そのイメージばかりが先行して、中日はチーム全体が暗くなってしまっている。強くしようという意識とは離れてきてしまっているように思えます」
はたして、落合GMは巻き返しのためにどんな動きを見せるのか。そして、また余波を広げるのだろうか。