「いや、そうした数字はどれも正しくないですよ」
こう言って苦笑いするのは、スポーツ紙デスクである。
「中日はもっとエグイことをしていました。実は山口にはメジャー挑戦の強い希望がある。だから『来年オフにポスティングでメジャーに行かせる。その代わり、単年5億円で来てくれ』と口説いたんです。巨人サイドも『3年6億円』という、だいたいの目安となる金額の情報を流し、相手(中日)を牽制していただけ。巨人も、契約途中であってもポスティングを認める、との方針転換も考えている。過去一度もポスティングは認めていませんが、もう時代が時代だから、と」
FA宣言するにあたり、山口は巨人の親しい選手に相談していたというから、そもそも最有力候補は巨人だったのかもしれない。
ところが、そんな山口に対し、DeNAは「中日に行かなくてよかった」と胸をなで下ろしているという。いったいなぜなのか。
「山口は『ノミの心臓』で有名。注目度が段違いな巨人で伸び伸びとピッチングできるとは思えない。だから『中日に行かれるほうが嫌だ。巨人ならおもしろくなるぞ』と、チーム関係者はひそかに喜んでいます」(DeNA関係者)
山口とともに巨人がW獲得した森福允彦(30)。古巣ソフトバンクでのワンポイント起用に嫌気がさして飛び出したとされるが、「グラウンド外での暴投」が不安視されている。
「森福は女癖、酒癖がよろしくないともっぱらで、ソフトバンク時代は問題行動が表ざたにならないよう、球団が必死で隠していました。酒が入るとついハメを外しすぎるんですね。だからソフトバンクも強く引き止めなかった。身体検査の甘い巨人が、獲得後にそれを知って焦ったといいます。特に賭博問題が発生してからの巨人は、コンプライアンスに関してうるさいですからね」(巨人担当記者)
このオフ、巨人は「欲しい欲しい病」が再発し、大補強に乗り出した。ところが、真っ先に手を出した中日・大島洋平(31)はFA宣言せずに残留を決め、岸孝之(32)は楽天に、糸井嘉男(35)も阪神にさらわれてしまった。これには落合氏の「解任余波」に振り回された実情があるという。
巨人は外野の絶対的なレギュラーが長野久義(31)だけで、シュアな打撃と俊足が際立つ大島や糸井はぜひとも欲しかった。巨人担当記者が続ける。
「大島は過去、同じくFA権を取得した平田良介(28)とともにコストカッターの落合氏と契約更改の席で衝突し、やり合った経験を持つ、いわば『反落合派』。それだけに、移籍が確実視されていました。ところが、落合氏解任が濃厚だとの情報が耳に入るや、2人そろって残留。『落合氏解任の決定がもう少し遅れていれば、流出の可能性は高かった』という声もあります」
相次いで外野手に逃げられた巨人は急きょ、日本ハムからFA宣言した陽岱鋼(29)獲得のため、オリックス、楽天と争うことになったのである。恨むべくは選手ではなく落合氏、なのかもしれない。