日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長が10月19日の定例理事会後、2034年W杯について、すでに開催国に立候補しているサウジアラビアを支持することを決めたと明かした。
JFAには2050年までにW杯単独開催を行う「公約」がある。34年大会はアジア開催の順番となっていたが、今回は立候補もせずにいきなり「白旗」を上げた形で、田嶋会長は「戦う道具があれば真っ向勝負になったかもしれない。諦めざるをえなかった」と話していた。
「34年大会の招致では、8万人以上のスタジアムが1会場、6万人以上が2会場、4万人以上が11会場も必要なんです。今の日本のスタジアム事情では到底ムリ。そもそも8万人以上を収容できるスタジアムは今の日本にはありませんからね」(サッカー担当記者)
JFAは自社ビル「JFAハウス」を総額100億円以上で売却したばかりだが、事業規模があまりに巨大化してしまい決して潤沢な予算が組める状況にはない。そんな中、国際サッカー連盟(FIFA)が34年大会に向け年内に立候補国を募り、わずか半年という期間で決定することを決めた。
「日本は国や都道府県などとの緊密な調整が不可欠。東京五輪でのスキャンダルもあって国民の支持も受けにくい。田嶋会長も日本はアバウトな招致計画を出す国ではないと言っていましたが、現状で日本のW杯単独開催は不可能に近い」(前出・サッカー担当記者)
W杯は次回の26年大会から48カ国出場となり、共同開催が既定路線になりつつある。田嶋会長も「1カ国で開催できるところは膨大なお金があるところに限られる」と話し、「これができるのはアジアとオセアニアなら1カ国しかない」として今回、立候補を決めたサウジアラビアを支持することを決めた。
アジアの中でもサウジアラビアに対抗する形で、オーストラリア、インドネシア、マレーシア、シンガポールの4カ国共催案が浮上していた。しかしインドネシアが撤退したことでサウジアラビアの単独開催が決定的な情勢だ。
「サウジは、中東では小国のカタールでのW杯が大成功を収めたことで、必ずやるという国家事業体制で立候補しています。欧州トップレベルのクリスティアーノ・ロナウドやネイマールを国家プロジェクトとしてサウジアラビアリーグに引き抜いたのも、W杯招致のためでした」(別のサッカー担当記者)
果たして協会の「2050年まで」の公約は果たせるのか。
(小田龍司)