10月29日のメインは天皇賞・秋。この秋の盾争奪戦が2000メートルになって今年で39年目を迎えるが、春(3200メートル)のそれとは違って、持久力に加えてスピードも要求される極めて厳しい戦いとなった。
GⅠ戦を制した馬は牡馬、牝馬とも高い評価を得続けるが、中でも天皇賞・秋を勝った馬は、スピードと持久力を兼ね備えた子供(産駒)を出すことで、特に種牡馬となる牡馬の価値は高くなる。
そうした視点で見てみると、昨年の覇者で、今年も満を持す4歳牡馬のイクイノックスを抜きには語れまい。何しろ、そのイクイノックスを輩出した父キタサンブラックは自身もここを制しており、種牡馬としての評価はうなぎ登り。イクイノックスもレーティングは世界1位で、現役では世界最強馬。史上最強の牝馬とも言われたアーモンドアイに続いて、この盾の連覇がかかっているからだ。
このあと予定されているジャパンCを最後に競走生活にピリオドを打つ予定で、秋は天皇賞とジャパンCの2戦のみ。当然、負けられない戦いなのである。
とはいえ、手強い国内の一線級が相手。楽な競馬など望むべくもない。
まずは顔ぶれを見てみよう。イクイノックスを含めてGⅠ馬は5頭。それに準じる馬(GⅠで2着あり)が3頭。そしてGⅡ勝ちの馬が3頭と、激しくも見応え満点の競馬が期待できるというものだ。
過去のデータでは02年に馬単が導入されて以降、これまでの21年間、その馬単による万馬券は5回(馬連は2回)。この間、1番人気で勝ったのは11頭(2着4回)、2番人気のそれはわずか1頭(2着5回)で、1、2番人気馬によるワンツー決着は2回のみ。
1番人気馬が2年に1度のペースで勝っているだけに、比較的堅いGⅠ戦と思われがちだが、2番人気馬が期待に応えていないだけに、簡単には収まらないとみるべきだろう。
年齢的には斤量が軽い3歳馬も頑張っているが、今年は参戦がない。となると4、5歳馬が圧倒的で、勝率、連対率ともほぼ互角である。
また、牝馬の活躍も目立つが、ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、アーモンドアイなど、勝ち負けするのは牡馬勝りの女傑ばかり。桜花賞、オークス勝ちのスターズオンアースは7戦連続して重賞で馬券になっているが、そのうち6戦が牝馬限定戦。これをどう評価すべきか難しいところでもある。
もろもろ考慮するも、当欄としては、さすがにイクイノックスを本命視するわけにはいかない。最も期待を寄せたいのは、ダノンベルーガだ。
この馬も高い評価を得ているが、他の有力どころと違ってまだGⅠを勝ってはいない。イクイノックスには昨年のダービー、天皇賞・秋で後塵を拝したが、ひ弱だった3歳時とは一変、たくましく成長し、2走前はGⅠドバイターフで僅差2着するなど力をつけており、逆転があっていい。
前走の札幌記念は4着に敗れたが、ドバイ遠征後の一戦で本来の姿ではなかった。やや余裕残しの状態だっただけにテンションが高く、スムーズなスタートが切れずに出遅れたもの。なので参考外にしていいのではないか。
立て直した今回は、しっかりと調整され、実にいい感じに仕上がっている。ハナからここが目標で、中間の稽古内容はホレボレするばかりだ。
血統的にもGⅠ馬が多くいる血筋。とにもかくにも地力強化しており、イクイノックスを打ち破って頂点に立っていい馬である。