繰り返しになるが、消費税増税法には、14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げることは書かれている。ところが、その時の景気を判断して延長すると、次にいつ引き上げるのかが書かれていない。また、増税を停止したあとに廃止にすることも書かれていないのだ。先送りにするためには新たな法律を作らなければならない。
経済評論家の三橋貴明氏が言う。
「安倍政権は『廃案にする法律を通すので、自民党と野党の皆さんは協力して』で終わりなのです。そもそも国会議員は法律を作るのが仕事で、その仕事をすればいい。解散する必要はまったくないのです」
つまり解散の「大義」などないのだ。ところが安倍総理は、なりふりかまわず解散と選挙をゴリ押ししようとしている。それはなぜか。
「これはいわば『安倍再選戦略選挙』です。来年9月の自民党総裁選の再選にとってシナリオを前に倒したほうが有利だと判断したということです」(浅川氏)
だが、それならば「7月選挙・総裁選勝利」のシナリオで十分だったはずだ。影響したのは今年4月の8%増税の悪影響だった。15日に発表されたGDP速報値がその証拠である。
「8%増税のインパクトは今後も続きます。増税を延期しても、集団的自衛権など安全保障の法律を作らなければなりません。そうすると来年、支持率が下がることはあっても上がることは考えられない。その時期に解散しても勝てる見込みがない。野党がガタガタの『今』やる理由は、安倍政権の長期政権化という目的以外には考えられません」(三橋氏)
こうして読売サイドの影響も手伝って、このタイミングで決断されることになった。
具体的な日程までささやかれだしたのだが、自民党に敵対する野党は選挙協力どころか、内紛状態にあるという。政治部記者が語る。
「『みんなの党』から分裂した『結いの党』は橋下徹(45)=大阪市長=と合流し『維新の党』になりました。党名で揉めたのはかわいいくらいで、政策の違いを理由に『分かれるべきだ』という声が噴き出しています。また『みんな』も渡辺喜美の問題で分裂含みです」
一時期林立した「第三極」のうろたえぶりはともかく最大野党の民主党は「消費税」を争点に自民党に勝負を挑むどころか、14日に増税見送りに賛成したのだ。そもそも「消費増税」は民主党が与党時代に自民・公明との3党合意で作られたはずである。にもかかわらず「増税」という政策論議を疎かにし、金と政治の追及でアピールを続けることばかりに腐心している。もはや最大野党とも言えないほどの体たらくなのだ。