突如として現実味を増した消費税増税の延期による年内の解散総選挙。仕掛けたのは他ならぬ安倍総理と菅官房長官だという。一向に好況感を生まないアベノミクスの信を問うことが今回の選挙の裏争点だが、今、ここで解散する“大義”とは何なのか。そこには長期政権を狙う安倍総理と、それに伴う政権内部の暗闘劇があった!
以前の記事で「来年7月解散」の可能性に触れ、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は安倍晋三総理(60)の性格を解説しながらこう語っていた。
「自暴自棄になり『解散』を口にする可能性はゼロではありません」
ところがその後、年内の解散総選挙は確定的に。はたして総理は乱心したのだろうか。きっかけは9日、日曜日の読売新聞朝刊による次の記事にあった。
「増税先送りなら解散」
1面と4面で増税延期が「いかに安倍政権にとって有利か」が報じられた内容だった。北京で行われたAPEC出発前、安倍総理はこの記事を読み、しばらく考えていたという──政治評論家の浅川博忠氏が解説する。
「あれは読売が野党に『解散』のブラフをかけた記事でした。それを安倍総理が利用したのです。北京出発前にそういう手があるな、年末選挙のほうが得なのではないかということで腹を固めて、菅官房長官周辺が『解散』の情報を流しました」
確かに、このもくろみには多くのメリットがある。
【1】野党は共闘も含めて準備ができていない
【2】4月の統一地方選があるので、地方議員が自分の選挙の前哨戦として本気で応援に取り組んでくる
【3】辞任した小渕優子、松島みどり両議員の他に閣内に4~5人いるという“傷物大臣”を一掃できる
それにしてもなぜ「読売」が野党にブラフをかけるのか。そこには読売新聞・渡辺恒雄主筆(88)と安倍政権の関係がある。官邸の関係者が語る。
「増税先送りと解散は渡辺さんが強く主張している論でした。官邸を通じて安倍さんに連日提言をしていたそうです」
渡辺氏と総理の窓口になったのは、選挙の参謀役である茂木敏充選対委員長と党内ではささやかれている。このことからも安倍政権と渡辺氏の蜜月ぶりは明らかであると言えよう。
水面下の動きが理解できたとしても、今回の解散総選挙が国民に理解しがたいことは間違いない。各社の世論調査が示すように、増税の先送りは多くの国民が願うところであり、それを先送りしたとして、なぜ「信」を問わなければならないのかわからないからだ。経済評論家の渡邉哲也氏が解説する。
「消費税増税法には附則があります。18条に景気対策条項がついていて、その時の政権、つまり総理が景気情勢を判断して増税の時期や停止を行うようになっています。ところが、この法律には停止後に廃止や修正をする一文がないのです。停止後も『死に体』として法律は残り矛盾が生じる。そこで法改正が必要となります」