実は、今回の選挙には「アベノミクスの信を問う」というわかりやすいテーマがある。総理みずからその成果を繰り返し喧伝するが、三橋氏はこう採点する。
「経済の目的というのは『経世済民』。つまり国民が豊かになっていなければ、あらゆる経済政策は失敗です。今『何点つけますか?』と問われれば0点です」
しかしアベノミクスで株価が大幅上昇したことは事実である。円安の影響でトヨタは今年7-9月期の純益が約2兆円にもなった。企業収益は上がり一部企業では給与も上がっている。
「それでも安倍政権によって実質賃金がマイナス3%という状況が続いています。原因の1つは消費税8%増税。物価を1.7%押し上げましたが給与はそこまで上がっていません。2つ目は円安です。輸出という需要が想定していたほど生み出されておらず、物価だけが上がりました。3つ目は原発を止めたことによる電気料金の上昇です。これにより可処分所得が下がっています」(三橋氏)
円安の影響で海外に生産工場を移した企業が再び国内に生産拠点を戻している。餃子の王将は国産となり、ホンダなど多くの企業が戻ってきつつある。つまり内需拡大が期待できるはずだ。しかし──、
「海外に拠点を移したのはリーマン・ショック後の円高が原因です。当時、企業は死活問題として外に出ました。でも、何が原因で再び円高に戻るかわからない状況で、企業が全部戻ることはありえないのです。効果を否定はしませんが過度な期待はダメです」(三橋氏)
みずからの経済政策への批判に対して安倍総理は、
「株価が上がれば消費が増える」
と繰り返してきた。
「総理は株価を指標に政策をやろうとしていますが、日本人の家計で資産に占める株式の割合は5%くらいです。アメリカ家計の30%とは別なのです。そこがわかっていないのか、詭弁を弄しているのかどっちかです」(三橋氏)
原点に帰れば「アベノミクス」の目的はデフレからの脱却である。ノーベル経済学賞受賞者・クルーグマンはニューヨーク・タイムズにこう寄稿した。
〈日本がデフレの罠から脱却するために必要な政策である〉
しかし、13日にIMF(国際通貨基金)から財務省、日銀などにある資料が送られてきたという。
「『日本は今年に入ってから消費者物価指数が実際のところは全体で見てもプラス0.3~マイナス0.2の間を推移している』ということが書かれていました。この数字の意味するところは、デフレが脱却できていないということです」(三橋氏)
この資料は公開されていないという。