世論調査支持率が「危険水域」目前の安倍政権。党内には超強気な態度を崩していない総理だが、心中穏やかではないようで、気を落ち着かせるために「特製ドリンク」を飲み、トイレの回数も増加、さらには反目議員に直接“恫喝”する電話の回数も増えているという。「裸の王様」の迷走ぶりを全部書く!
8月5日午前10時、官邸では安倍晋三総理(60)と二階俊博総務会長(76)の話し合いが行われていた。しばらくして二階総務会長が出てくると、待ち構えていた記者たちが取り囲み、二階氏は渋い表情でこう語った。
「キミたちは総理に総裁選のことを聞いてもらいたかったんだろう。でも、そんなことを今、軽々しく言えないよ。礒崎首相補佐官の発言? 総理が気にしていないといったら、ウソだろうな」
その言葉は、第二次政権誕生以来、初めて安倍総理が窮地に追い込まれていることを意味していた。政権運営で最大のネックになっているのは、集団的自衛権の行使などが可能になる「安保法案」である。
「批判もあるが、確固たる信念と確信があれば政策を前に進めないといけない」
衆院での採決を前に、強い口調で発言した安倍総理。だが、与党単独による「強行採決」で通過させると、政権の支持率は急落。安倍政権に好意的な読売新聞でさえ7月24~26日に実施した世論調査では、不支持が49%で支持の43%を上回ったのだ。それを知った安倍総理は側近に、
「逆転したね‥‥」
と、つぶやいたという。
政治評論家の浅川博忠氏はこう指摘する。
「昨年12月の衆院選で自民党が圧勝したことで何をしても許される、というおごりが党内に蔓延しています。参議院で60日ルール(60日以内に参院で採決されなくても、衆院で再議決できる)を適用すれば、支持率は危険水域と言われる30%を切ることもあるでしょう」
これまで安泰だった安倍政権に逆風が吹き始めたきっかけについて、東京新聞編集委員の五味洋治氏はこう説明する。
「民主党の辻元清美衆院議員に、『早く質問しろよ』と安倍総理がヤジを飛ばして、審議がストップ。あの印象の悪さと、自民党が推薦した憲法学者らが、安保法案を『憲法9条に違反』と発言したことで、世論の雰囲気が変わりました」
ほころびが見えた政権に追い打ちをかけたのは、「総理のお友達」の礒崎陽輔首相補佐官(57)の失言だった。7月26日の大分市の講演で安保法案について、
「我が国を守るために必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない」
と公言したことで、連立を組む公明党は不快感を示し、野党は猛烈な批判を浴びせた。これに安倍総理は、「誤解を持たれるような発言は慎まなければならない」と参院特別委員会で述べたが、更迭はせずに幕引きを図ったのだ。政治部デスクはこう話す。
「礒崎氏は東大卒の自治省出身で謝れない性格は有名でした。今回の発言でも謝る気はなかったんですが、安倍総理の指示で政府側が想定問答を用意し、謝罪の練習までさせたんです」
8月3日の参考人招致で礒崎首相補佐官は、「おわび」という言葉を7回繰り返したが、政権へのダメージ回復にはつながらなかったようだ。