厚労省幹部が続ける。
「死亡消費税は、言うなれば『消費をしなかった税』です(笑)。現在の高齢者は預貯金をはじめ相当の資産を形成していますが、法定相続人が複数にわたることもあって、現行制度ではかなりの資産額にならない限り相続税は発生しません。そこで、消費をせずにカネを貯め込んだことに対する一種の『罰』として、死亡消費税が浮上してきたんです」
折りしも、来年からは相続税自体も大増税される。これまでの相続税控除額が大幅に引き下げられるのだ。年金の支給開始年齢がジリジリと遠のいていく中、ならばしかたなしと老体にムチ打って働き続けたあげく、老後の虎の子の資産まで相続税増税や死亡消費税でむしり取られていく‥‥。
アベノミクスに批判的な自民党の重鎮も「最近の安倍自民はいささか調子に乗りすぎている」としたうえで、次のように指摘するのだ。
「今年4月の環境税(ガソリンに課税される地球温暖化対策税)増税に続き、来年4月には軽自動車税も増税される。そんな中、返す刀で、政府・与党は自動車重量税の引き上げや商用車に対する課税強化などを秘かにもくろんでいる。そればかりか、党内から『オンラインゲームや電子書籍にも課税したらどうか』との意見まで飛び出した時には、驚きを通り越してアキレ返りましたよ」
実は、自民党内で繰り広げられている、大増税へ向けたアイデア合戦には、安倍総理に対する忠誠心競争が見え隠れしている、との指摘もある。実際、総理周辺からは、こんな声が漏れ伝わってくるのだ。
「安倍総理は今、東京五輪が開かれる2020年どころか、さらに4年後の2024年までの超長期政権を目指し始めている。しかも、今秋に控えているのは、3分の2の閣僚が入れ替わるともいわれる、安倍政権初の大々的な内閣改造。いち早く勝ち馬に乗り、あわよくば閣僚入りを、と考えるのは当然の議員心理だ」
何のことはない、安倍総理は国民や世論ばかりか、党内の海千山千の各勢力まで、しっかりと手玉に取っていたのだ。
しかし、である。ここで思い起こさなければならないのは、アベノミクスのそもそもの基本原理だ。
確か安倍総理は「経済が上向けば税収も自然に増える」と主張していたはずだ。だからこそ、インフレへ向かう中で実質的な賃金がダウンし続けても、雇用制度改革にともなうリストラで転職を余儀なくされても、国民はアベノミクスに一定の理解を示してきた。
ところが、政権発足から1年半を過ぎて見えてきたのは、「増税」の大合唱。安倍総理がウソをついていたのか、アベノミクス自体に欠陥があるデタラメノミクスだったのか。いずれにせよ、国民はみごとにダマされたことになる。