白井英治は小さい頃、よく父に連れられて下関ボートに行った。大きくなったら選手になりたい、そう言って喜ばせたが、やがて父は今村豊のことを話すようになる。今村は白井と同じ山口県美祢市の生まれ、故郷のヒーローである。今村さんのようになれよ、それが父親の口癖となった。
白井は今村と同じ美祢工高に進学。3年になると今村の自宅を訪ね、憧れの人から、本栖研修所を卒業したらボクのところにおいでという言葉をもらった。
97年4月、本当に今村は白井を弟子にした。当時は選手持ちプロペラの時代だったが、この時、イの一番にこう伝えている。プロペラはボクが叩くから心配いらない。それより、しっかり旋回の練習をしろ。
教えを守って白井が猛練習を重ねたのは、地元下関の水面である。あれから17年、彼が下関で残した航跡を眺めると目をみはる思いがする。最近3年間に66走して1着42本、2着12本、2連対率81.8%。3着6本で3連対率90.9%。勝率9.12。こんな数字はめったに見られない。
11月25日【火】~30日【日】の「チャレンジカップ」の舞台は下関。この水面への思い入れの深さ、そして強さ。さらに若松メモリアルで優勝した勢いからしても、ここは狙い撃ち一本だろう。
なお、白井の次走は12月9日~14日の「芦屋MB大賞」となっている。
◆ボートレース評論家・水上 周
◆アサヒ芸能11/25発売(12/4号)より