阿部慎之助新監督が率いる巨人の来季コーチングスタッフの組閣が全て決定した。一軍打撃コーチだけが「公表時期調整中」として発表されていなかったが、巨人OBで日本ハムのスカウトだった矢野謙次氏に決まった。
矢野氏は自身のSNSで「阿部監督から『謙次の元気でチームを明るくしてくれ!』との特命を授かりました」と発信。監督からの直々の大抜擢となった。それにしてもなぜ43歳で巨人の、それも一軍の打撃コーチにいきなり就任できたのか…。
矢野氏は2002年にドラフト6位で巨人に入団。現役時代に「阿部派」の1人として自主トレなども常に一緒に行動していた。阿部監督の大のお気に入りで、現役引退セレモニーではVTRの挨拶で松井秀喜氏、掛布雅之氏らに続いて矢野氏が3番手に登場している。それだけ2人の関係は深く、矢野氏は「阿部さんには(矢野が)先頭打者のときに代打を出され、ふてくされた態度をとった時に電話で本気で怒鳴りつけられたんです」というエピソードも披露している。
阿部内閣の陣容を見ると大幅に若返り、平均年齢は50代から45歳になった。原内閣は全権監督だった原前監督による一本釣りでコーチ人事が決まり「お友達内閣感」いっぱいだったが、阿部内閣の場合は経験不足のメンバーばかりが揃っている。投手コーチは現役時代に黄金バッテリーを組んだ内海哲也コーチが就任したものの、
「西武ではファーム投手コーチ止まりで、コンビを組む杉内(俊哉)投手チーフコーチとともに一軍での指導経験がほとんどありません(21年シーズンのみ7月まで一軍コーチ)」(巨人担当記者)
参謀役は阿部監督より二学年上の二岡智宏ヘッド兼打撃チーフコーチが誕生したが、これも未経験の役職につく。最年長は来年60歳を迎える川相昌弘一軍内野守備コーチで、昨季(一軍総合コーチ)からの配置展開となった。
「川相コーチについては球団フロントが原前監督の『お目付け役』として復帰させていましたが、契約の兼ね合いで続投することになりました」(前出・巨人担当記者)
そんな状況の中、打撃部門でも「阿部派」の若手、矢野コーチの抜擢となり、結局は投打コーチが誰1人として一軍選手を育成した実績がない布陣になった。「原派」はほぼ一掃できた人事となったが、経験と実績不足の顔ぶれが揃う内閣だけに、来季開幕スタートでつまずけば一気に機能不全に陥りそうだ。
(小田龍司)