秋のGⅠシリーズが続く中、今週は京都競馬場でエリザベス女王杯が行われる。現役牝馬の女王を決める一戦で、地力にモノを言わせて古馬が制するか、それとも秋華賞で勝ち負けするなど勢いに乗じる3歳馬が突き抜けるか、毎年激しい競馬が展開されている。
3歳勢では3冠を難なく成し遂げた女王リバティアイランドが早々とジャパンC挑戦を表明。ここは使わないことになったが、生きのいい秋華賞3着馬が出走してくる。対する4歳以上の古馬勢の顔ぶれはなかなか。昨年の覇者ジェラルディーナを筆頭として骨っぽく力のある馬ばかりだ。
ということで毎年問われることだが、はたして3歳か古馬か。もしリバティアイランドが出走してきていれば大勢は決したかもしれないが、図抜けた存在がいないのであれば、どちらに軍配が上がるかは微妙と言わざるをえない。
そもそもこれまで3歳馬と古馬は、ほぼ互角の戦いを演じている。馬単が導入されて以降、これまでの21年間で3歳馬は8勝(2着6回)。勢いに乗る4歳馬が10勝(2着6回)。そして5歳馬は3勝(2着9回)、6歳馬は出走頭数も少ないが勝ち鞍はなく、2着が2回という具合だ。
このように対戦成績が拮抗している要因のひとつは、3歳馬が秋華賞から1キロ軽くなる54キロ、古馬が56キロと、斤量に2キロの開きがあることが微妙に影響していると言えるだろう。
ちなみに過去、連覇を成し遂げたのはメジロドーベル(98年、99年)、アドマイヤグルーヴ(03年、04年)、スノーフェアリー(10年、11年)、ラッキーライラック(19年、20年)の4頭。今年はジェラルディーナが挑むことになるが、3歳の最強馬が出走してこないのであれば、古馬に一日の長あり、ではなかろうか。
3歳馬の人気どころは、ハーパーとブレイディヴェーグだが、前者は牝馬クラシックで④②③着と堅実な走りをみせてはいるものの、突き抜けるだけの破壊力は持ち合わせていない。
後者は1勝クラスを勝ち上がったばかりのローズSで2着したように、秘めた能力、地力のほどはかなりのもの。血統もよく、母系は欧州の一流血脈で、一族にはGⅠ勝ち馬も多い。コンビを組むのがルメール騎手とあって、条件上がりで菊花賞を圧勝したドゥレッツァを彷彿させるが、完成域に達するのはまだまだ先と思え、GⅠを勝つまでに至っていないのではなかろうか。
というわけで、3歳勢は本命視するまで強くは推し切れない。期待したいのは古馬。特に生きのいい4歳馬で、ルージュエヴァイユをイチオシしたい。
前走の府中牝馬Sは、ディヴィーナにまんまと逃げ切られてハナ差の2着。しかし緩い流れの中、よく追い上げたと感じさせられる好内容だった。しかも4カ月ぶりの実戦だったことを思えば、大いに変わり身を見込んでいいはずだ。
距離を不安視する向きもあるが、父ジャスタウェイは安田記念だけでなく、天皇賞・秋を制しており、母の父は14戦全勝の怪物フランケル。祖母が凱旋門賞を制したデインドリームとあっては、2200メートルの距離はまったく問題なかろう。
休み明けを一度使われたことで中間の稽古内容は軽快かつリズミカル。黒岩調教師も、
「反動もなく、実にいい感じに仕上がっている」
と、目を細めるほどの好状態である。
初の関西遠征になるが、京都の外回りが舞台だけに、身上の強烈な末脚がモノを言うはずだ。