外国馬勢の不振を尻目に、外国人ジョッキーの活躍はすさまじい。過去15年、必ず1人は馬券圏内に顔を出している。昨年も、R・ムーア(英国)がジェンティルドンナを連覇に導き、W・ビュイック(英国)は、11番人気のトーセンジョーダンで3着し、観衆をアッと言わせた。
「今年もジェンティルを託されたムーアは現在、世界ナンバーワンのジョッキーです。世界中の競馬メディアの記者に聞いても、誰もが『いちばんうまいよ』って答えますね。何がすごいか。ひと言で言えば、世界中のどこでも勝ってしまう。考えられないことです」
今年3月、ドバイシーマクラシックで前をふさがれる不利の中、ジェンティルで優勝したシーンは記憶に新しいところ。その後も快進撃は続き、今年は世界7カ国でGI15勝(11月16日現在)。直線が180メートルほどの舞台で最後方から差し切るなど、自在な戦法は“神業”と称され、圧倒的な人気馬を倒したシーンも1度や2度ではなく、まさに円熟期を迎えている。
「代名詞の『豪腕』ぶりだけでなく、自在に制御する技術、ペース判断の的確さ、どれも卓越してます」
11月16日の東京競馬場では9戦して〈3411〉。芝、ダート問わず、大切な馬券を託せる騎手だ。
フランスの騎手も怖い存在だ。今年はエピファネイアとC・スミヨン、C・ルメールがフェノーメノ、新進気鋭のブドーはトーセンジョーダンで挑む。
「フランス出身の騎手は、ちょっと(折り合いの)難しい馬を操るのが得意です。フランスではレースのペースが遅くなりやすく、調教にしても一団となって行うため、ふだんから折り合えないようでは話にならない。実際にルメールは、乗り難しいコスモバルクでJC2着していますからね。今年ならスミヨンが、リズムよく走らせたいタイプのエピファネイアで、どんな競馬をするか、今から楽しみです」
若手のブドーは今年GI初勝利をあげた21歳の若武者だ。日本でも人気のO・ペリエやスミヨンを輩出した、名門ファーブル厩舎に所属している。
「ペリエは来日して騎乗の幅を広げたものでした。96年の凱旋門賞ではペースが遅いと見るや、エリシオで果敢に逃げ、きっちりと結果を残しました。日本人から見れば普通のことも、フランスで逃げる戦法は、まず許されません。(人気馬の)エリシオなら、なおさらのことで、勇気がいるもの。日本での経験が生かされ、一皮剥けた印象でした」
ペリエ自身、「日本で騎乗していなければ、大胆な戦法を取ることはできなかった」と、後日、語ったものだった。
「ブドーもまた、フランス流の調教師の指示に従う騎乗スタイルから解かれ、日本流の思い切ったレースで結果を残しそうです」
11月9日の東京最終レースでは最内から8番人気馬で突っ込み2着。翌週16日の京都9Rでは5番人気の馬に騎乗。外枠から好位につけ、断然の人気馬との激しい叩き合いを制した。今後も武者修行中の追えるブドーに注目したい。
◆アサヒ芸能11/25発売(12/4号)より