新型コロナで日常生活を制限した反動が一気に出ている。
今年の秋は宮城や長野、愛知などですでにインフルエンザ警報が史上最速で出ており、11月9日現在、都内23区や多摩地域4地域の保健所でも感染者数が30人/週を上回る「警報級の感染者数」が報告されているという。
さらに同日、子供用に甘い味付けがなされたインフルエンザ治療薬「タミフルドライシロップ」の生産が追いつかず、出荷制限すると製造元の中外薬品が発表したばかり。
インフルエンザの治療薬が品薄になっただけでなく、さらに心配な傾向も出ている。都内の小児科医によれば、
「幼稚園や保育園、小学校低学年の10歳以下の子供たちの間で、インフルエンザと感染性胃腸炎の同時感染が起きています。高熱と嘔吐を伴うため、水を飲めずに脱水症状や意識障害を起こすリスクが高くなっている。重症化させないために、子供が嘔吐したら早めに病院を受診してほしい」
感染性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス感染で引き起こされる。園児や低学年児童は新型コロナの感染対策で3年間も日常生活が制限されたため、ウイルスや病原菌への自然免疫が作られていない。しかも5000円を払ってインフルエンザワクチン接種を希望しても、タダで接種できる老人に優先的に接種するため、子供の接種を断る悪質な診療所もある。保育園や幼稚園、小学校でインフルエンザの感染が拡大しているのに、子供たちへのワクチン接種が追いついていない状況だ。
さらに今年はA型、B型のインフルエンザウイルスが同時に報告されており、インフルエンザに感染して体力が落ちているところに、別の型のインフルエンザに感染することも。
自衛策としては、
①インフルエンザワクチンのほか、感染性胃腸炎を引き起こすロタウイルスワクチンを接種する
②手洗いと喉の粘膜についたウイルスを洗い流すために、こまめな水分補給
③薬局でコロナとインフルA型、B型の同時検査ができる検査キットを購入しておく
④子供用の経口補水液やアイスクリームを買い置きしておく
⑤お腹の調子が悪い時は登園、登校、出勤を無理しない
残念だが、無料タクシー代わりに救急車を呼びつける迷惑患者のせいで、今も救急車要請は逼迫しており、子供の意識が朦朧としてからでは遅い。子供の嘔吐が止まらず点滴することも想定して、できれば20時頃までの病院受診、もしくはオンライン診療で早めに治療薬を手に入れてほしい。
(那須優子/医療ジャーナリスト)