30年経った今でもサッカーファンの胸にささっている、地区最終予選の最終戦「ドーハの悲劇」。そのイラク戦までにチームの裏側で何があったのか、ドーハ組の吉田光範氏、柱谷哲二氏、福田正博氏、北澤豪氏が前園真聖氏のYouTubeチャンネルで明らかにした。
最終予選の前、イラクは最も情報が少ないチームで、清雲栄純コーチは予選に参加した国の中で一番強いチームだと話していたという。日本がイラクと試合をするのは最後。それまでの試合で情報が得られるが十分ではなく、西野朗氏と山本昌邦氏はスカウティングに明け暮れ、体じゅう蜘蛛の巣だらけで宿舎に帰ってきたという。また、偵察先で2人が銃を突きつけられたこともあったと柱谷氏は明らかにした。
試合前にはイラク代表に関する眉唾ものの未確認情報がいくつも流されたそうで、
「イラクは試合ができないという怪情報があった」
「イラク国籍ではない選手が出場しているという話を聞いた」
「もうW杯出場のチャンスがないのでイラクは試合をせずに帰るらしい」
「いや、帰るとムチ打ちの刑になるから帰れず、亡命するらしい」
そんな噂まであったと福田氏と北澤氏は明らかにした。
もちろん試合は行われ、いざキックオフとなるとそれまでとはスタメンが大きく変わり、FWの選手がサイドバックになっているなど苦労して手に入れた情報はあまり役に立たなかったとか。
しかし、チームの雰囲気はよく、柱谷氏は、
「キャプテンとして仕事をしなくてもいいぐらいまとまっていた。みんなが自分で何をすべきか考えて動いてくれた」
と振り返った。結果はご存じの通り、2-1でリードしながらロスタイムに同点に追いつかれ予選敗退。日本にとって初のW杯本戦出場は夢と消えたが、この「悲劇」も場数の一つとなって今の代表があるということだ。
(鈴木誠)