その理由を、スポーツ紙デスクが解説する。
「高橋は自分がはやばやと将来の監督候補となることで、尊敬する松井氏と『順番』が逆になってしまいかねない。ひょっとしたら松井氏の指導者としての目を潰してしまうのではないか、とまで懸念し、最初は就任を遠慮していたようなのです」
では、松井氏がオファーをきっぱりと断った理由はどこにあるのか。一つは、ヤンキースへFA移籍した際の「わだかまり」だとされる。デスクが続ける。
「渡辺氏が『残ってくれるにはいくら払えばいいんだ。白紙の小切手を渡すから、好きな金額を書いていい』と言ったとか。当時、6億円もの年俸をもらっていた松井にとっては金額の問題ではなかったのに、札束で顔をはたくような言い方に顔をしかめた」
さらに、コーチ就任の話題が出る会談についても、
「何かとミスターを出席させる点です。みずからを育ててくれた恩師に頼まれればとても断りづらいのをわかっていて、ミスターを使う巨人に怒っているのです」(スポーツライター)
実は正式オファー以前、松井氏がみずからの本心を打ち明けていた人物がいる。
今年3月29日、元セ・リーグ記録員の河野祥一郎氏が73歳で他界した。松井氏は河野氏と公私ともに親しくつきあい、玄関に松井氏のサインバットが飾られている河野氏の自宅に呼ばれることもたびたびあった。河野氏の葬儀に、松井氏は個人で供花を出している。
河野氏は生前、松井氏に質問したことがあった。
「お前、今後はどうするつもりなんだ?」
松井氏は次のように答えたという。
「妻が『今住んでいるアメリカの環境がすごくいいので、ここで子供を育てたい』と言っています。『日本でコーチの仕事はしないでほしい』と。だから巨人ではやりません。臨時コーチをやるのはいいんですが」
米国在住ライターが言う。
「極度にマスコミを嫌い、人前に出たり写真を撮られたりすることを避けたがる夫人は『日本で(指導者を)やるなら1人で行ってね』と言ったとか。子育てに専念し、家族を第一に考えている松井氏が単身赴任までする気はないのです」
生活環境が劇的に変わらないかぎり、「心変わり」もないようなのである。