11月26日、東京競馬場の芝2400メートルで争われたJC(ジャパンカップ)は、圧倒的な1番人気に推されたイクイノックス(4歳牡馬)が4馬身差で圧勝し、海外GI(ドバイシーマクラシック)を含むGI6連勝を決めた。
鞍上のルメールは感涙にむせびながら「直線は凄い反応でビックリしました」とレースを振り返ったが、ターフに刻まれたレースラップは、イクイノックスの圧勝劇が見かけ以上に強いものであったことを示して余りある。
レースは吉田豊騎乗のパンサラッサが玉砕的な大逃げを打ち、前半1000メートルの通過タイムが57秒6という超ハイペース。稀に見る縦長の展開でレースが進む中、イクイノックスは離れた2番手に構えたタイトルホルダーのやや後ろに位置を取った。レースの上がり(残り600メートルの走破タイム)が遅くなることは、誰の目にも明らかだった。
事実、上がり(先頭を走るパンサラッサが残り600メートルのハロン棒を通過してから、イクイノックスが1着でゴールインするまでに要したタイム)は36秒5もかかっている。そんな中、イクイノックス自身の上がりタイムはメンバー最速の33秒5。この時計は4~5番手を進んだ2着リバティアイランドの上がり33秒9と3着スターズオンアースの上がり34秒0を上回っており、6番手から上がり33秒7で4着に食い込んだドウデュースも含めて、後続馬はイクイノックスに完封されてしまったのである。
実は異例のハイペースとなった前走の天皇賞(東京・芝2000メートル)でも、イクイノックスは3番手から上がり34秒2の末脚を繰り出して、レコード勝ちしている。尋常一様の馬なら、直線で馬群に沈んでいるところだ。事実、同レースでは最後方を進んだジャスティンパレスとプログノーシスが、直線だけで2着と3着に飛び込んでいる。
これらイクイノックスの驚異的な強さについて、ある馬産地関係者も次のように舌を巻いている。
「レース後のインタビューで、ルメールは『アドレナリンが出た』『鳥肌が立った』という表現まで持ち出して、イクイノックスの直線でのパフォーマンスを絶賛していた。まさに騎乗している者にしかわからない、異次元のスピードとキレだったわけです」
現在、イクイノックスのレーティング(11月5日までのロンジンワールドベストレースホースランキング)は世界No.1の129。今回のJCでの圧勝ぶりを目の当たりにして、JRA(日本中央競馬会)はレーティングをどこまで上げてくるのか。
競馬ファン注目の結果は、12月7日に公式発表される。
(石森巌)