11月26日夜、東京・上野にある貴金属店に、バールなどを手に持った3人組の強盗が押し入った。ところが、事件はあえなく「未遂」に。実はこの時、3人組の強盗を撃退させたのが「刺股(さすまた)」と呼ばれる捕具(暴漢などを取り押さえる道具)だった。
3人組の強盗が店内に押し入ろうとするや、店員は備え付けの刺股を手に取った。怯んだ3人組が店外に引き下がると、店員は身の丈よりも長い刺股をブン回し、バールを手に力なく威嚇する強盗らに応戦。そして手も足も出せないままうろたえる3人組を横目に、店員が犯人らの乗ってきたバイクを刺股でメッタ打ちにして破壊し始めると、恐れをなした強盗らは脱兎のごとく、その場から逃げ去ったのである。
翌27日夜、犯人2人が埼玉県内の警察署や交番に出頭。警視庁は残る1人の行方を追っているが(11月28日現在)、ここで注目すべきは刺股の威力である。
刺股は2~3メートルの長さの柄にU字型の金具などがついた捕具で、警察や自衛隊などで使用されているほか、最近は学校や金融機関などでも導入が進んでいる。
「刺股の防御性能は優秀です。柄の部分が非常に長く作られているため、刃物を持った暴漢くらいなら、U字型の先端で簡単に取り押さえることができる。ただ、相手にU字型の先端部分をつかまれると、そのまま力任せに攻撃されてしまう危険性があり、使用にあたっては複数で臨むことが理想になります。その意味では今回、店員が刺股をブン回し続けて先端をつかませなかったのは、大正解と言っていいでしょう」(警視庁OB)
実は事件後、刺股メーカーに全国各地からの注文が殺到しているという。さすがに拳銃などの飛び道具を持った暴漢などには無力かもしれないが、アメリカのような銃社会とは違う日本では、非常に防犯効果の高い捕具と言っていいだろう。
(石森巌)