「あの頃は予告先発がないから、大博打」
そう言ってほくそ笑んだのは、2007年に落合博満監督率いる中日のバッテリーチーフコーチだった森繁和氏だ。この年、セ・リーグの覇者である巨人とクライマックスシリーズで対戦したのだが、第2ステージ初戦を前に、敵将の原辰徳監督を「えぇ~!?」と仰天させたのだ。
元広島・高橋慶彦氏のYouTubeチャンネル〈よしひこチャンネル〉で12月5日、森氏は当時の舞台裏を冒頭のセリフのごとく明かしたのだった。
まずCS第1ステージ、リーグ2位の中日は、3位・阪神を相手に挑んだ。初戦の先発は川上憲伸、2戦目は中田賢一で2連勝。当時の中日のナンバー1、2の投手を起用したことにより、
「山井(大介)か、小笠原(孝)なんだよ」
と森氏が言うように、巨人との第2ステージでは3番手、4番手の投手を先発マウンドに上げることになる。そこで森氏が考案したのは、原監督を騙すことだったと振り返るのだ。
幸いにも阪神との2戦目は、初回に中日が一挙5得点し、余裕のある展開に。ここであえて小笠原を中継ぎに起用して、巨人との初戦の先発は右の山井だと思わせた。ところがフタを開けてみれば、なんと左の小笠原が先発。巨人は山井対策として1番から8番まで左打者を揃えてしまったことで、ベンチは大慌てだったという。
結果、中日は3連勝して日本シリーズへと進み、トレイン・ヒルマン監督率いる日本ハムに4勝1敗で日本一の座に。セ・リーグで初となる、2位からの日本一となった。
落合監督のオレ流采配で注目を浴びた中日だったが、策士がしっかりサポートしていたのである。
(所ひで/ユーチューブライター)