サラリーマンであれば、誰もが煩わしいと感じる、業務時間外の連絡。欧州ではこれを拒否する、いわゆる「つながらない権利」法制化の動きがあるようだ。筆者は何でも「欧米では…」という風潮には疑念を持っているが、コレは素直に羨ましい。
日本ではプロバイダー大手のビッグローブが20歳から50歳代の労働者892人にアンケート調査を実施したところ、「つながらない権利への配慮」に対して、約75%が賛成している。よほど苦しめられているのだろう。
コロナ禍の前後で、通信環境は劇的に変化した。かつて業務時間外の横やりといえば、電話やメールが中心であったが、今やオンライン会議や電子承認など、休暇中の労働者を捕捉する手段が増えて、ますます手に負えない状態となってしまった。
在宅勤務だって増えたのだ。裏を返せば、ほとんどの仕事がオフィスでなくても実行可能な状態になった、とも言える。
一例を挙げれば、電子決済を部長が行うにあたり、急ぎの決済であればバカンス中であろうと、応じなければならない。この部長は会社のインフラ担当に抗議したらしいが、
「規程上、代理承認は不可です。部長であれば、休暇中の対応も当然です」
と言われて屈服したという。
紙の書類で確認していた頃は、休暇中であれば対処のしようもなく、諦めるしかなかった。これが電子決済になった途端に、休暇中でも「しなくてはいけなくなる」という、実に不思議な話になっている。
こうして24時間、休日も管理される管理職。なりたい若者はますます減っている。
ともあれ、「つながらない権利」を認める動きは、日本でもぜひ望むところ。ただ、導入して業務時間外の連絡を抑制すればどうなるかは、おおよそ想像はつく。若手はいいにしても結局、この「つながらない権利」のしわ寄せは、滅私奉公の経験値の高い中間管理職が食らうことになる。
働き方改革同様、仕事の納期など顧客やクライアントの要望が同じであれば、結局は誰かがやらなければいけない。
中間管理職には相変わらずトラブルや問い合わせの連絡が入るが、休暇中の部下には連絡ができない。結果、自分で黙々と処理をすることになる。中間管理職の無限残業列車は、さらに加速していくことになる。サラリーマン残酷物語は、まだまだ続きそうだ。
(群シュウ)