一族を集めて、首相公邸で大ハシャギ忘年会──。最近の岸田文雄政権がそんなスキャンダルで騒がれているその裏で、秘かに「サラリーマンの敵」となる政策を推し進めていることご存じか。「硬直的な労働市場を見直して成長産業に人材が移動しやすくする」(日本経済新聞)との名目の下、退職金の税負担の見直しを進めようとしているのだ。
日経新聞によると、岸田政権は6月中に決める経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に、勤続年数による税優遇の格差を是正する方針を盛り込むという。今の退職金制度は、勤続20年以上の場合、退職一時金を支給される際の税負担が軽くなる仕組みになっている。その制度設計を見直そうというわけだ。
退職金に関する制度改革は、岸田首相が看板政策として掲げる「新しい資本主義」の目玉となっている。岸田首相の言う労働市場の「三位一体」とは「リスキリング(学び直し)」、職務内容を明確にして成果で評価する「ジョブ型」の導入、成長分野への労働移動の円滑化、を指す。
もちろん、終身雇用のみが正しいわけではないが、会社やその仕事が好きで長年同じ会社で働き、貢献してきた人たちを否定する話とも言えるのだ。作家の門田隆将氏は「日本の企業文化破壊にも乗り出す」とツイートした。
岸田首相の掲げる政策を喜ぶのは経営陣と、それに群がるコンサルタント会社、転職サービスである。これが真の「三位一体」と言えよう。
岸田首相は早ければ今国会末にも、衆院の解散・総選挙に踏み切ろうとしている。先進7カ国首脳会議(広島サミット)を成功に導き、日経平均株価がおよそ33年ぶりに高値を記録していることから、解散のチャンスとみているのだ。
サラリーマン世代は退職した年配層に比べれば投票率が低く、大した影響はないと高をくくっているのかもしれない。今こそサラリーマン世代が立ち上がり、岸田政権の暴挙にノーを突き付けることが求められそうだ。