ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者で「ワグネルの乱」を主導したエフゲニー・プリゴジン氏。今年8月、そのプリゴジン氏がモスクワからサンクトペテルブルクに向かっていたプライベートジェットの墜落で死亡した一件に関連し、プーチン大統領の最側近として知られるニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記が、プリゴジン氏の暗殺指令を出していた、との衝撃情報が世界を駆け巡っている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版が欧米情報筋やロシア情報筋の話として伝えたもので、パトルシェフ書記が8月に暗殺計画の策定を補佐官に命じ、後日、計画を示されたプーチン大統領も反対しなかったとしている。その後、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は「作り話だ」として暗殺を否定しているが、報道が事実なら、プリゴジン氏はクレムリン(ロシア大統領府)によって殺害されたことになる。
実はこの間、パトルシェフ書記はもうひとつ、重要な役回りを演じていたとされる。本サイトが10月26日と10月31日に配信した記事でも指摘したように、パトルシェフ書記はモスクワ時間の10月26日、ロシア北西部のバルダイにある秘密の別荘で静養中のプーチンに随行していた、ロシア連邦警護庁のドミトリー・コチュネフ長官から「プーチン急死」の報を最初に受け取ったとされる、重要人物でもあるのだ。
この時、SVR(ロシア対外情報庁)の元上級幹部らが運営しているとされるテレグラムチャンネル(ゼネラルSVR)が伝えたコトの次第は、以下の通りだ。
〈10月26日午後8時42分、医師団は昼過ぎから危篤状態に陥っていたプーチンの死亡を確認した。その後、医師団はプーチンの遺体が横たわる部屋でしばらくの間、大統領警護官らによって身柄を拘束された。プーチンの遺体が別荘内の冷凍庫に安置されたのち、コチュネフ長官はモスクワにいるパトルシェフに連絡を入れ、今後は死亡したプーチンの影武者を仕立てる形で、集団指導体制に移行することを決定した〉
プーチンの動静とクレムリンの内情に詳しい国際諜報アナリストが指摘する。
「パトルシェフはプーチンと同様、旧ソ連のKGB(国家保安委員会)出身で、長男は農相に就任している。プーチンをめぐる死亡説や影武者説の真偽は不明ながら、パトルシェフがポストプーチンの座を虎視眈々と狙っていることは、一連の情報の出方や内容から見ても間違いないだろう。つまり、情報の一部はパトルシェフから出ている、ということになる」
プーチンとクレムリンの動静からは、ますます目が離せないのである。
(石森巌)