「サイルリアン仮説」という、超古代文明に関する思考実験論文をご存じだろうか。これは2018年4月に「International Journal of Astrobiology」に掲載され、全世界の古代史研究家の間で大きな注目を浴びたものだ。
論文を共同で作成したのは、NASAゴダード宇宙科学研究所の気候科学者ギャビン・シュミット博士と、ニューヨーク州ロチェスター大学の天体物理学者アダム・フランク教授。地球には人類誕生よりもはるか以前に高度な文明があった、とする仮定のもと、世界の地質記録で産業文明を検出することが可能かどうかを検証したものである。地質学関係者が語る。
「ホモサピエンスが初めて地球に登場したとされるのが、およそ30万年前。しかし両教授によれば、原始地球において陸上で最も太古からの変化が見られないイスラエル南部のネゲブ砂漠は、180万年前の状態から変わっていないといいます。そしてホモサピエンスが活動していた痕跡を遡れるのは、地質学的にはせいぜい250万年前までのことで、その先にある化石としての痕跡を残す生命体はごくわずか。大多数の化石標本が存在せず、消えてしまっている可能性が高いというのです」
シュミット博士はこの考察を、1970年代に放送された英BBCの人気SFテレビシリーズ「ドクター・フー」に登場する、核実験により4億年の眠りから覚めた、爬虫類型ヒューマノイドの名になぞり、「サイルリアン仮説」と名付けた。
「サイルリアンはトカゲに似た架空の知的生命体なのですが、2人の科学者は5600万年前の暁新世の終了と始新世の始まりの時代に発生した気候変動に着目した。この期間に地球の平均気温が15度も高くなったことにより、地球上の氷がほぼ消失。その結果、超古代文明における自然が壊滅した、との仮説を立てているんです」(前出・地質学関係者)
つまり、極度の地球温暖化により自然が変異し、化石さえも残さぬほど、地球上から全てのものが完全に消え去ってしまった、というものだが、
「一見、突飛な仮説と思われますが、超古代文明については検証があまりに遅れていることから、彼らの仮説を一定評価する科学者は少なくありません」(前出・地質学関係者)
さらなる研究結果が待たれるのである。
(ジョン・ドゥ)