2024年シーズンも、プロ野球は波乱のドラマが待ち受けている。異例ではあるが、「日米初の快挙」達成の偉業からスタートさせよう。
米球界で最優秀防御率、サイ・ヤング賞のタイトルも獲得したバウアー(32)がDeNAと契約したのは昨年3月のことだった。5月3日のデビュー戦で初勝利を飾ると、その勢いのまま8月25日の中日戦で10勝目を挙げた。この時点で、逆転で最多勝獲得の可能性もあったが、8月30日の阪神戦で負傷。それが最終登板となってしまった。
「今オフ、メジャーリーグ復帰を目指したいとするバウアーの気持ちを汲み、DeNAもいったんは保留選手名簿から外した。しかしMLBではDVトラブルに対し、裁判判決とは別に独自の処分を下してきました。性的暴行で処分されたバウアーも同様で、投手としてまだ最盛期にある彼の復帰交渉が難航しているのはそのためで、各球団が敬遠している状況です。日本球界に残る可能性が高まっています」(米在住記者)
バウアーは米球界との交渉を始める前に「NPBに残るならDeNA最優先」を口にしていた。ポスティングシステムでメジャー入りを目指す今永昇太(30)の譲渡金が20億円超とも言われるDeNAにとって、呼び戻す資金も申し分ない。
スポーツライターの飯山満氏が言う。
「昨年、バウアーは故障するまで志願の中4日登板を可能な限り続けていました。完投を美徳とする『投げたがり屋』で、奪三振率も高い。昨年とは違い万全の状態で開幕からフル回転すれば、セの投手4冠(最多勝、防御率、奪三振、最高勝率)が十分に狙えるでしょう」
中4日の投げたがりだから、沢村賞の選考基準にある「投球回数200イニング以上」のクリアも見えてくる。同賞は昨季まで3年連続で山本由伸(25)が獲得したが、200イニングを超えたシーズンは一度もない。山本はそれを補って余りある活躍をしてきたわけだが、「バウアーはその上を行く『25試合登板、10完投、15勝、勝率6割、200イニング、150奪三振、防御率2.50』の7項目すべてを満たす〝リアル沢村賞〟が狙えます。昨年3月のDeNA入団会見から、興味を示していた沢村賞の獲得で、SY賞と合わせ史上初の2冠達成が期待されます」(前出・飯山氏)
ところで、阿部慎之助監督(44)率いる巨人では、救援陣の補強を進めている。昨年末、阪神を退団したカイル・ケラー(30)を獲得。その前に行われた現役ドラフトでも、同じく阪神から馬場皐輔(28)を一本釣りしている。
「23年の救援陣の防御率3.81はリーグワースト。阿部監督は大勢(24)をクローザーにしてスタートするつもりですが、下半身の故障の回復がまだ未知数なんです。大勢が不振の場合、8回を任せていた中川皓太(29)を9回にコンバートするのではなく、別の投手に9回を任せるつもりでいます」(球団関係者)
その代役が馬場であり、連投が重なった時の〝保険〟がケラーなのだという。
「馬場は力投型のイメージですが、本来は変化球投手なんです。試合ではカットボール、スライダー、フォークのみですが、カーブやシュートも投げられる器用さも秘めている。阪神時代とは異なった配球で、クローザーで使うという明確な目標を与えれば大化けする可能性も高いでしょう」(前出・飯山氏)
馬場は試合に出たい一心から「中継ぎで」と遠慮してきたというのだ。
「大勢の故障は、クローザーの重圧が遠因になりました。無理をさせないという理屈で表向きは大勢と馬場の併用となりますが、馬場の方をメインに起用していくことになりそうです」(前出・球団関係者)
阿部監督は勝ちパターンの継投を確立させる必要に迫られている。
「巨人の開幕カードは阪神戦です。ケラーにホールド、馬場にセーブがつくかもしれません」(前出・飯山氏)
タフで連投も利く、馬場正平以来のG馬場がセーブ王のタイトルまで突き進むかもしれない。
気になるのは、推定4年総額16億円でソフトバンクに入団した山川穂高(32)である。ほぼ1シーズンを棒に振った男の復活はあるのだろうか––。
「いまだ獲得に対してファンの非難が絶えません。実は契約更改でも選手たちから『生え抜きには冷たい』という声が上がっている。歓迎ムードではない中での新たな船出となりますが、かえって野球に集中できるとも。真面目に練習して本塁打量産でタイトルを取れば、ファンが祝福してくれるかもしれません」(前出・飯山氏)
24年もプロ野球は見どころ満載のようである。