あれは誰もが目を見開く、驚きのシーンだったのではないか。1月14日に京都で開催された「全国都道府県対抗女子駅伝」での、田中希美の爆走劇である。
1区の永長里緒から20位でタスキを受けた兵庫県代表の田中は、序盤から快足を飛ばす。中継所では1分近い差があった、トップの石川県代表・猿見田裕香を逆転して19人抜きを達成し、1位で3区・藤田莉沙に託した。12分11秒で区間賞を獲得したが、チームは最終的に7位。宮城県が29年ぶり2度目の優勝を果たしている。
規格外の走りを見せた女子中距離界のホープだったが、
「さすが1000メートル、1500メートル、3000メートル、5000メートルの日本記録保持者の走りだと感心する傍ら、距離4キロの2区で15年ぶりの区間記録更新とならなかったことに、ガッカリの声も見受けられます。2区の区間記録保持者は同じく兵庫県出身で、この日のテレビ解説者だった小林祐梨子さん。2009年に記録した12分07秒でした。カーブの多い難コースで、小林さんも幾度となくこの区を走っており、経験の賜物と語っていました。ですが成長著しい田中には、アッサリ抜き去ってもらいたいとのファン心理が働いた」
一方で、あの田中の走りを凌駕した小林さんを賛辞する声が上がっており、レース後の田中も、
「今の自分の全力を出し切っても届かなかったので、やっぱり祐梨子さんは偉大だなと思いました」
と敬意を表していた。ちなみに2009年の小林さんはなんと、29人抜きを達成。
今年は田中にとって非常に大切な、パリ五輪が控えている。
(所ひで/ユーチューブライター)