年明け1月2日の夜に羽田空港で発生した、日航機と海保機による衝突炎上事故。事故原因については目下、警察の捜査に加えて国の運輸安全委員会による調査が行われているが、調査報告書がまとまるまでにはかなりの歳月を要するとされている。
しかし事故原因の究明は、それほど難しいものなのか。実は多くの航空専門家が「日航機と管制官、海保機と管制官の無線記録を見れば、事故原因は明々白々。しかも国交省が公表した無線記録には改竄や隠蔽などの形跡は認められず、一連のやりとりは事実と考えられる」とした上で、今回の事故原因を次のように断じているのだ。
まずは海保機の機長らが管制官の指示を誤認し、滑走路の手前で待機せず進入してしまった。これが第1のミス。その後、海保機は約40秒間、滑走路上で停止していたが、管制官は海保機の滑走路への進入に気がつかなかった。これが第2のミスで、2つのミスが重なった結果、着陸機である日航機が海保機に衝突して炎上した――。
この事故を取材してきた全国紙社会部記者も、次のように指摘している。
「第一義的な事故原因は、海保機の機長らが管制官の指示を誤認したことにあります。しかし航空のあらゆる現場には、ミスやトラブルなどをリカバリーするフェールセーフのシステムが何重にもわたって張り巡らされている。事実、羽田空港には滑走路への誤進入を管制官に視覚で知らせる警報システムが導入されており、管制官が警報システムの画面をチェックしてさえいれば、着陸態勢に入っていた日航機にゴーアラウンド(着陸のやり直し)を命じることで、海保機との衝突は確実に回避できたはずです」
ところが、だ。着陸進入中の日航機は滑走路上の海保機をなぜ視認できなかったのか、管制官が海保機に優先離陸を伝えたことが誤認を招いたのではないかなど、焦点のボケた議論が繰り返されている。さる政府関係者が、その舞台裏を明かす。
「管制官を統括しているのは国交省、海保機を運用しているのは海上保安庁。いずれ劣らぬ国の機関であり、国交省にも海保にも『責任は取りたくない』との思惑がある。その結果、責任のなすり合いで真相究明がウヤムヤ、堂々巡りになっているわけです。おそらく運輸安全委の調査結果も、問題点の羅列で終わるのではないでしょうか」
これでは海保機で死亡した隊員らの御霊が、浮かばれないのではないか。
(石森巌)