グルメライターの下関マグロ氏は言う。
「いきなりウン万円もする寿司屋を予約するのはハードルが高いかもしれません。そこでオススメするのがランチの活用。握る人もネタも変わらず、店によっては夜の10分の1の値段で寿司が食べられます。以前に行った銀座の店では握りランチが1000円台。マグロだけでなく、肉厚のアジや上品な味付けのかんぴょう巻きを堪能。味噌汁がおかわり自由というサービスもうれしかったですね」
ランチタイムに大将や店の雰囲気をチェックし、もしも気に入れば夜に再訪。酒を飲みながら舌鼓を打つのもいいだろう。とはいえ、値段設定が「高級」でも、そこが一流の店とは限らない。河岸氏がプロの目利きを指南する。
「おいしいマグロを仕入れて、そこそこ経験を積んだ職人が握れば、及第点は出せるもの。そこで差が出るのは、安い食材をいかにおいしくできるか。例えば酒のつまみで注文するタコの煮つけ。柔らかく煮つけるには技術が必要ですし、いくら高級店でもきちんと仕事ができる人は意外と少ない。他にも、ふわっと焼き上げた穴子、あぶった白身にも職人の技量が表れます」
高級店のカウンターで試されるのは客も同じだ。冒頭のようなトラブルを起こさないためにも、最低限のマナーが求められる。
「これが正解というわけではありませんが、職人が目の前で握った寿司は、やはり手で取ってひと口で食べてほしい。口に入れる際には上下を逆にして、最初にネタが舌に触れることで、ネタの風味がダイレクトに伝わります。なんでも、冷蔵技術が進んでいない、大正や昭和初期には傷んだネタが提供されることも珍しくなく、当時の人はそうやってダメなネタを嗅ぎ分けていたとか。こんなウンチクを女性との寿司デートで披露したらモテ度も上がりますよ」(下関氏)
最後は河岸氏に、寿司談議をピシッと〆ていただこう。
「ロボットがシャリを握って、その上にネタを乗せるだけという回転寿司を否定するつもりはありません。しかし、最近は寿司学校なんてものができて、2カ月やそこらで卒業できると聞きますし、家庭料理の延長のような寿司を出して1万円以上の料金を取る店が増えてきたように思います。私に言わせれば、寿司ではなく、小さなおにぎりの上にただ刺身を乗せたようなもの。海苔の上に酢飯とマグロの切身を盛りつけただけの偽りの“鉄火”で2000円も取るような店もあります。1日10人を接客して、年間1000万円、2000万円を稼ぐ最高級店のプロとの差は歴然です」
日本に生まれたからには、ホンモノの寿司を味わっておくべきかもしれな い。