「昭和の怪物・江川卓を現役引退に追い込んだ本塁打」と呼ばれる、見事な逆転サヨナラツーランがある。小早川毅彦が放った一発だ。
1987年9月20日、広島VS巨人戦。広島の1点ビハインドで迎えた9回、3番・高橋慶彦のファーストゴロを中畑清が捕球するも、ベースカバーの江川に投げたボールが逸れ、出塁を許す。小早川は巨人の先発・江川から2打席連続で本塁打を放っており、9回の2本目でサヨナラ劇を演出したのである。
野球解説者・江本孟紀氏のYouTubeチャンネル〈江本孟紀チャンネル「エモやんの、人生ふらーりツマミグイ」〉に、小早川氏が出演し、この試合を振り返った。
これまで3度の盗塁王を獲得している高橋の一塁出塁だったが、
「高橋さんがランナーに出るとピッチャーは警戒しますが、江川さんは全く無警戒だった。僕だけ抑えることを(考えていた)…」
さらに、捕手・山倉和博のサインを江川はいっさい無視していたようで、
「山倉さん、サイン出すじゃないですか。私が打席に入ってハッキリ聞えたのは、山倉さんがボソッと『わっ、アカンわ』と言ったんですよ」
江川はストレートで真っ向勝負を挑もうとしていた。しかも山倉が構えたアウトコースではなく、インコースで…。
「マウンドの江川さんの体にみなぎる、巨人の星の星飛雄馬みたいなもんと、山倉さんの『わっ、アカンんわ。もうコントロール効かん』で、これは真っ直ぐしかないなと思って…」
この年、巨人はリーグ優勝して日本シリーズに進出。西武に2勝4敗で敗れ、江川は引退を表明した。
渾身の一球を仕留められてしまったことに、後悔はなかっただろうか。
(所ひで/ユーチューブライター)