サッカー日本代表がアジア杯での優勝を逃したことで、森保一監督の解任論が囁かれ始めている。ところが、である。実際は想像以上に安泰だというのだ。長年、日本代表を取材してきたサッカージャーナリストは、その理由を次のように説明する。
「とにかく後ろ盾が盤石ですから。森保監督を最も評価しているのが、日本サッカー界のドンである川淵三郎元協会会長ですからね。川淵さんが首を縦に振らない限り、解任はありえない。田嶋幸三会長もバリバリの川淵派ですしね。続投は既定路線でしょう」
今年3月でその田嶋会長は退任。宮本恒靖専務理事が第14代の日本サッカー協会会長に就任予定になっている。本来ならその宮本新体制の船出で代表監督問題が取り沙汰されそうだが、その可能性は低いようである。
これまでの2年間は、協会で実務トップの専務理事を担ってきたが、歴代の専務理事と比べても目立った実績を残していない。前出のサッカージャーナリストも、
「このまま会長になっても、すぐには動かない。当面は静観し、何もしないでしょう」
スポーツ紙サッカー担当記者もこう続ける。
「そもそも47歳での会長就任は史上最年少で、どこまでリーダーシップを発揮できるのか疑問が残ります。元々、代表で長くキャプテンを務めてきたため、リーダーシップはあると思われていますが、元々そんなタイプの人間ではありません」
目下の日本サッカー界最大の目標は、ワールドカップでベスト8以上の成績を残すこと。そのためには出場権を必ず獲得しなくてはいけないわけだが、2026年にアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国で共同開催されるワールドカップのアジア枠は、8.5(直接出場8枠+プレーオフ1枠)にまで拡大している。他国の追い上げはあっても、日本が出場権を逃すことは、現在の日本の実力を考慮すればありえない。
「宮本政権は長期になると予想されていますが、万が一、森保監督を交代させて代表が不振に陥ったり、W杯出場を逃すような事態になれば、どうなるかわからなくなる。そんな火中の栗を拾うようなことはしないでしょう」(前出・サッカー担当記者)
森保監督はアジア王者にはなれなかったが、まずは命拾いということか。
(阿部勝彦)