サッカー日本代表はW杯で2度、PK戦で敗れている。最近では2022年のカタール大会だった。
1回目は2010年の南アフリカ大会。この時、PKを外した駒野友一氏が鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルで、PK失敗の裏側を明らかにした。
駒野氏によると、キッカーと順番は岡田武史監督が決めたという。駒野氏はそれまでPKに自信があり、外したことはほぼなかった。それもあって、3番目のキッカーに指名されたようだ。
まったく緊張することなくボールを蹴ったが、その時の心境について、
「上を狙ったけど、軌道を見たら高すぎる、バーに当たると思った。バーに当たった瞬間は『やってしまったな』ということを一番に思ったかな」
その後はGKの川島永嗣に託し、何もできず、ただ願うしかなかったという。
結果、対戦相手のパラグアイは5人全員が決めて勝利。日本はラウンド16で南アフリカから去ることになった。
試合後、多くの選手が駒野に声をかけたが、
「記憶がない。自分しか外していないわけだから、責任は自分にしかない。他の選手と目を合わせることができなかった。下向くしかなくて、外からの声も全然入ってこなくて、誰がどういう言葉をかけてくれたのかも全然わからない」
そして「その後」について、次のように振り返ったのである。
「ホテルに帰ってご飯を食べて、監督が話をして解散になったんだけど、食事は喉を通らない。みんなはしゃべったりしていたけど、その中に入っていけなかった。部屋に帰って、他の人と会うのは嫌だなと思って部屋から出なかった。勝っていれば、次の試合でスペインと戦える。試合したかったな、というのはありましたね」
そんな壮絶な経験をした駒野氏は現在、サンフレッチェ広島のスクールコーチを務めている。子供たちにはこう教えているという。
「失敗してもネガティブにならないこと。トライしてほしい」
PKを失敗したからこそ言える、説得力ある教えだった。
(鈴木誠)