昨年から患者数が増加している「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」。発症すると、手足の壊死など短時間で急速な状態悪化を招き、死に至る危険もある。国立感染症研究所のデータによると、23年の国内発生数は941件と、99年の調査開始以降で過去最多となっている。
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」は「溶連菌」により引き起こされる感染症だ。
溶連菌自体は、日常生活の範囲に普通に存在する。通常であれば感染しても無症状なことも多く、ほとんどの場合は咽頭炎などを患う程度で済む。
しかし、まれに血液などに菌が侵入。筋肉周辺組織の壊死を起こすことがあるのだ。
特に60代以上に多いと指摘されているので注意したい。
主な感染経路は飛沫や接触。傷口に菌が付着して発症することが多いが、皮膚表面の傷だけでなく、青アザや捻挫など、傷口のないケガでも発症するケースもある。症状としては、発熱や嘔吐、悪寒、下痢、頻脈、頻呼吸、四肢の疼痛などが挙げられる。
感染すると、皮膚の強い痛みと共に皮膚が赤色に変化し、症状の範囲が急速に拡大する。その後、水ぶくれができて皮膚が黒く壊死してしまうこともある。
症状が出てから重篤に至るまでは、非常に早く1日かからない場合もある。
発症はかなりまれではあるが、一度発症したら、早急かつ高度な医療が求められる。
患部に強い痛みがある、患部の赤みや腫れに加えて、高熱や強いだるさなどの症状がある、患部が赤くなった後に赤紫〜黒みを帯びてきた、水ぶくれができたなどの場合には、早めに病院を受診するようにしよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。