昨年12月にステージ4のすい臓ガン告知を受けた経済アナリスト・森永卓郎氏。「桜は見られないでしょう」と医師に告げられながらも、抗ガン剤治療や免疫療法を続け、3月9日には遺書ともいえる「書いてはいけない――日本経済墜落の真相」(フォレスト出版)を上梓した。なぜ日本経済が転落したのかをテーマに、ジャニーズの性加害や財務省のカルト的財政緊縮主義など、口にすればメディアから締め出されること必至のタブーに挑んでいる。
その卓郎氏を公私ともに支えているのが、長男で同じく経済アナリストの森永康平氏だ。卓郎氏の代役でメディア出演や講演を行い、親子共演が増えた。卓郎氏が病院へ向かう際には肩を貸すなど、闘病を支えている。
「子供の頃はあまり一緒に遊んでくれなかった父親ですが、社会に出てからは仕事で時間を共有することが増えました。ありがたいですね」
そう語る康平氏はもうひとつ「別の顔」を持っている。3月22日に、世界的格闘技イベント「K-1 WORLD MAX」で3度王者に輝いた小比類巻貴之氏がプロデュースする「EXECUTIVE FIGHT-BUSHIDO-」の第11回大会「暁」に、格闘家として出場するのだ。「EXECUTIVE FIGHT-BUSHIDO-」は各界のエグゼクティブ経営者が出場するチャリティーイベントで、これまで幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏や、元・光GENJIの大沢樹生らが出場してきた。
康平氏が格闘技デビューしたのは、昨年9月の同イベントだった。その後は地下格闘技の試合にも出場し、今回で4戦目となる。そもそも、なぜ経済アナリストが格闘技なのか。康平氏の考えはこうだ。
「10代、20代の若者に政治・経済に興味を持ってもらうきっかけを作りたかったからです。私は経済アナリストであると同時に、子供向け金融教育企業を経営する社長をしています。今、日本経済は大きな転換点にあります。若者はもっと興味を持って知識をつけ、お金に振り回されない人生を送ってもらいたい。そのためにはどうすればいいかと考えていた時、今、若者の間では格闘技が熱いと聞き、挑戦してみることにしました」
康平氏は小学生の頃から格闘技観戦が大好きで、高校時代は柔道に打ち込み、初段を持つ。明治大学政治経済学部在学時は2年間、空手道場にも通った。格闘技戦挑戦はガリ勉の無謀なそれではなく、裏付けがあったのだ。
まずは体重を80キロから60キロに減量。その上で、ジム通いやランニングで体力・筋力をつけ、闘える体を作っていった。
「トレーニングは去年6月から、ほぼ毎日行っています。今回の減量も順調ですよ。夜の会食?ほとんど断っています」
ストイックに自分を追い込むことが好きなようだ。
ただ、実戦は厳しく、これまでの戦績は1勝2敗。若者の心にリーチするという目標も「まだまだ」というのが実感だ。
「オヤジには『バカじゃないの』と言われ、家族にも嫌がられています。でも、人生は一度きり。挑戦しないで終わりたくない。周りから理解されないことを全力でやるところは、ミニチュアカーやフィギュアなどを家の床が抜けるぐらい収集するオヤジに似ているのかもしれません(笑)」
卓郎氏は厳しい病状から急快復し、桜を楽しめそうだ。康平氏は「エールをもらいました」と語る。3月22日の試合では、父親に負けない熱いファイトを見せてくれることだろう。