花見の季節を控え、京都では連日、国内のみならず海外からの観光客で賑わっている。一方で、2002年度から財政不均衡状態が続いており、「財政再生団体」に転落する可能性まで指摘されるほど、深刻な財政危機に陥っている。
観光客が戻ったことで経済が潤うだろうと思いきや、「実はそうでもないんです」と声を落とすのは、京都市内の観光業に携わる人物だ。その理由を尋ねると、コロナ前とは異なる「外国人の旅行プランの変化」にあるという。
「コロナ前は個人旅行者の欧米人が多く、ビジネスホテルやゲストハウスなどが人気でした。ところが今は円安の影響で、外国人旅行者のプランに変化が起きているんです。特に多いのが、中国人や台湾人富裕層のオーダーメイドツアー。家族や友人同士など親しい人のみ、バンやミニバスでめぐるツアーで、プランが決まっています。外国人観光客のみを受け入れるランチの店なんかに行くようですね。 外国人向け価格なので高額ですが、日本人が来ないから、待たされることもない。融通も効き、ツアー客の多忙なスケジュールに合わせた時間帯で料理を提供してくれると、その人気は高まっています」
京都は花見や紅葉などの観光シーズンに入ると、市内の飲食店は予約をしないと入れないほど。そのため、多少の値が張っていても、タイムパフォーマンスを重視する外国人観光客には都合がいいのだろう。観光業に携わる人物が続ける。
「せめて宿泊業が潤ってくれれば…と期待したのですが、それもイマイチでした。富裕層の団体客は広い部屋に泊まりたがるため、近隣の大阪や滋賀のホテルを利用しています。京都は景観条例により、市街地では建物の高さを最大で31メートル(10階建て相当)までと決められているんです。ホテルでも広い部屋を作りづらいんですよね。大阪や滋賀なら大人数で宿泊できる外資系ホテルや温泉旅館がたくさんあるので、外国人はそっちに泊まって、バスで京都に来て観光して帰っていきますね」
その結果、宿泊業のみならず、街の飲食店さえも、経済効果としてはいまいち伸び悩んでいる。さらに期待されていた国内からの旅行者も、ホテルの値上げラッシュにより、期待には及ばないというのだ。桜の花が咲く季節には、経済への影響が大幅プラスに転じることを期待したいが…。
(京野歩夢)