チームの雰囲気がガラリと変わった。阿部慎之助監督(44)率いる巨人の評判が爆上がりだ。主力選手やスタッフの多くがまるで〝何か〟から解放されたかのように明るい表情を浮かべている。その要因とは―。
阿部監督が課す練習メニューが、例年になく厳しい内容となっている。
「キャンプ終盤には阿部監督みずからバットを握り、秋広優人(21)に『もうヘバッたか!』と言いながら四方八方にノックの雨あられ。秋広については遅刻癖を嘆き、キャンプ前に『3軍に落とそうかと思った』などと口走るなどボロカスでしたが、明らかに期待の裏返しです。秋広の潜在能力を高く評価しており、それを引き出そうと、あえて鬼になっている。そうした指揮官の愛情を秋広自身も汲み取り、スロースターター型の性格が豹変して火がついています」(巨人番記者)
就任当初こそ、2軍監督時代の〝パワハラ体質〟が蒸し返され、前時代的な指導法が選手から猛反発を食らう懸念を示す向きもあった。だが秋広に限らず、〝鬼の阿部〟に秘められた愛情を選手たちは感じ取っている。結果、チーム内では「阿部監督になって本当によかった。〝あの人〟が去ってくれたおかげで―」との声がささやかれ始めているというのだ。
「あの人」とは言わずもがな、巨人前監督・原辰徳氏(65)のことである。昨季は球団史上初となる、同一監督による2年連続のBクラスに沈み、責任を取る形で3年契約の2年目で辞任。阿部新監督にバトンを引き渡した。しかしながら、本人は契約3年目もやる気満々だったようで、その後に生じた巨人上層部との確執に関し、球界関係者が打ち明ける。
「結局、原体制の長期政権化によるマンネリズムがチーム低迷を招いていると、山口寿一オーナー(67)ら球団上層部が最終的に断を下し、引導を渡したのです。監督退任後もオーナー付特別顧問の職を与えられてはいますが、事実上の〝お飾り職〟。巨人サイドは新体制の阿部カラーを強めるため『原排除』を裏テーマとし、それを着々と今も水面下で押し進めています」
実際に原氏は監督退任後、古巣を一度も訪問していない。春季キャンプ中も番記者の間で「電撃来訪」が噂されていたが、ついに最終日まで姿を見せなかった。その代わり、超大物OB・松井秀喜氏(49)が6年ぶりに古巣キャンプを再訪し、4日間にわたって臨時コーチを務めている。
「松井さんも『慎之助が監督になるなら』と言い切って、系列紙の新春対談企画に登場。それがきっかけで、キャンプ訪問を二つ返事で快諾した。原さんのことが嫌いだからです(笑)。松井さんはジャイアンツ在籍最終年の02年、監督1年目の原監督の元で日本一を達成。強い残留要請を蹴ってFA宣言し、ヤンキースへと移籍した。以来、両者は大人の付き合いをしているものの、本当の関係性はギクシャクしたままですからね」(球団関係者)
いずれにせよ、粛々と進む「原排除」はおおむねチームをプラスの方向へと導いているようだ。春季キャンプ取材に訪れた球団OBの評論家も、笑みを浮かべながら、
「昨季まで長らく、現場にいる誰もが原の顔色をうかがいながら野球をやっていた。選手はもちろんのこと、コーチも含めスタッフ、ほぼ全員です。長期政権のツケであることは言うまでもありませんが、阿部体制になって『やっと解放されたよ』と露骨に本音をぶちまけるベテラン選手もいた。キャンプイン以降、厳しい練習にさいなまれながらも選手たちは一様に明るさを取り戻し、現場首脳陣も指揮官に妙な気遣いをすることなく本業に集中できる環境が改めて整った。巨人が本来あるべき姿に〝帰着〟できたということです」